研究課題/領域番号 |
19K04958
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 貴幸 豊田工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (70548437)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 河道湾曲流 / 破堤解析 / 高濃度流 / 開水路乱流 |
研究実績の概要 |
多発する豪雨災害により,河川堤防が破堤して洪水氾濫が発生するケースが頻発している.破堤発生箇所の予見は困難であることから,様々な手法で破堤に関する研究が行われているものの,そのほとんどが清水を扱った研究しか行われていない.実際の洪水流は土砂を多く含んでおり,その粘性特性を把握した上で氾濫解析を行う必要性がある.また,高濃度流を対象とした様々な法線形状における流れの三次元乱流構造を把握することは学術的な観点からも重要であると考える.このような観点から,本研究では清水流や高濃度土砂流を対象とした破堤発生メカニズムに関する研究に取り組むことを目的としている. 2019~2021年度には,河道湾曲部を有する模型堤防において,湾曲形状の異なる状況における流動機構や破堤発生状況について検討した.実験では異なる4つの河道湾曲形状を対象として詳細に比較検討を行った.実験の結果,越流開始場所の傾向は曲率半径の違いに影響を受け,曲率半径が大きい河道では外岸側から,曲率半径が小さい河道では内岸側から越流が発生することが確認された.また,接線角が大きい程,越流範囲が大きくなると推察されるに至った.さらに,主に越流発生箇所にて破堤が発生することが明らかになった. また,破堤が発生しない河道湾曲部を有する流れにおいて,湾曲部形状の違いが乱流構造にどのような影響を与えるかについて,iRICソフトウェアのNaysCUBEソルバーを用いて数値解析により明らかにした. これに加え,PSA(ポリアクリル酸ソーダ)水溶液を用いて開水路における高濃度土砂流の抵抗や流れの解析を行った.2021年度には洪水流を対象に,橋脚を有する開水路流れにおける高濃度流の挙動について様々な流況を対象に解析した.これらに加え,植生群落や水制群を有する流れの抵抗特性および流動機構に関しても検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019~2021年度には,河道湾曲部を有する河川模型を使用し,異なる湾曲形状における破堤発生状況や流動機構の検討を行った.曲率半径を60cmおよび90cm,接線角を45°と60°とした組み合わせによる,4つのケースについて詳細に解析を行った.また,木製模型を用いて洪水氾濫が発生する際の越水箇所については明らかにしたものの,土堤を用いた破堤発生状況に関する検討については実験回数が十分に確保できていないため,これまでに3ケースのみの実施となっている.今後残りのケースについては,模型土堤を作成するためにコンクリートの型枠を数種類用意して実施していく. また,様々な湾曲形状を有する開水路流の乱流構造を明らかにするため,iRICソフトウェアのNaysCUBEソルバーを用いて数値解析を行った.これにより,曲率半径や接線角の違いにより流速分布や二次流ベクトルといった流れ構造が大きく変化することを明らかにした.今後は流体密度を変化させた際の流動機構に関して検討していく必要がある.さらに,高濃度流について橋脚を有する流れについて実験的研究を進めているとともに,植生や側岸凹部を有する流れの抵抗特性や流動機構に関しても実験的に検討している. これらの研究遂行状況により,進捗状況としてはおおむね良好であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は次のとおり研究を遂行していく. ・これまでに実験を行うことができていない河道法線形状における破堤発生状況を把握するため,湾曲度合の異なる土堤模型を作成し,高濃度流を非定常状態で発生させることで破堤箇所について検証を行う.また,破堤発生個所を補強した際の破堤発生状況についても実験により詳細に明らかにする. ・上記の実験結果を基に,湾曲部における高濃度流の洪水氾濫流の解析を行う.様々な河道法線形状について実験を行うことで,清水との比較を行う.また,PSA水溶液の濃度を変化させて実験を行うことで,粘性の違いが破堤発生状況に与える影響についても検討する. ・様々な河道法線形状において,橋脚や植生,水制等が設置されている条件を対象に,清水や高濃度流を伴う流れの流速分布や乱流構造を明らかにする.また,境界条件の違いによる破堤発生状況についても解析を行う. ・清水および高濃度流を対象とした破堤箇所を有する河道内外の流動機構を数値シミュレーションに再現する.河道内外において既往研究の平面2次元不定流モデルによる外水氾濫モデルといった研究結果を参考に,本研究ではiRICソフトウェアのNaysCUBEにより河道内の三次元乱流構造を,Nays2Dfloodソルバーによる非定常二次元流解析などにより河道外の氾濫挙動の解析を行う.また,解析結果の比較検討のため,有限要素法であるAnsys Fluentによる解析等により,結果の妥当性についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により参加予定の学会が全てオンライン開催となり,旅費が発生しなくなったため.次年度に物品費または旅費として使用予定.
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