多発する豪雨災害により,河川堤防が破堤して洪水氾濫が発生するケースが頻発している.破堤発生箇所の予見は困難であることから,様々な手法で破堤に関する研究が行われているものの,そのほとんどが清水を扱った研究しか行われていない.実際の洪水流は土砂を多く含んでおり,その粘性特性を把握した上で氾濫解析を行う必要性がある.そのため,本研究では清水流や高濃度土砂流を対象とした越流を有する河道における流れ構造と破堤発生メカニズムの解明について取り組むことを目的とした. 最終年度である2022年度には,これまでに実験を行うことができていない河道法線形状における破堤発生状況を把握するため,湾曲度合の異なる土堤模型を作成し,越流状態における破堤発生箇所について検証を行った.また,破堤が発生しない河道湾曲部を有する流れにおいて,湾曲部形状の違いが乱流構造にどのような影響を与えるかについて,iRICソフトウェアのNaysCUBEソルバーを用いて数値解析により明らかにした.さらに,洪水流を対象に植生群落等を有する流れの抵抗特性および流動機構に関しても検討を行った. これらの研究結果により,越流を伴う河道湾曲流において,越流開始場所の傾向は曲率半径の違いに影響を受け,曲率半径が大きい河道では外岸側から,曲率半径が小さい河道では内岸側から越流が発生することが確認された.また,接線角が大きい程,越流範囲が大きくなると推察されるに至った.さらに,主に越流発生箇所にて破堤が発生することが明らかになった.また,数値解析において湾曲部形状の違いによる乱流構造について明らかにするとともに,植生や橋脚などの様々な境界条件を有する清水および高濃度流における乱流構造についても解明した.
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