研究課題/領域番号 |
19K04961
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大谷 竜 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50356648)
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研究分担者 |
兵藤 守 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), 特任技術研究員 (00415986)
橋本 学 京都大学, 防災研究所, 教授 (20293962)
隈本 邦彦 江戸川大学, メディアコミュニケーション学部, 教授 (20422016)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 / 臨時情報 / 不確実な地震予測 / メディア |
研究実績の概要 |
地震発生に関する不確実な予測情報が発表された際、人々や組織がどのような対応や防災行動を取りうるかは、そうした情報がどのように「生成・発信・流通・使用」されるかといった一連のプロセスの連鎖の結果として決定される。このような過程で、どのような防災上の課題が生じうるのかを見つけ出すことを目的に、本年度はシナリオ手法や図上演習に関する先行研究や事例の包括的な調査を実施し、本研究に適したシナリオ手法の方法論に関する体系化を行った。また、大規模地震発生の常時監視において、通常とは異なる現象が観測された場合、それがどのように評価判定され、その結果どのような情報が発信されるかといった「予測情報の生成・発信」のプロセスに焦点を当てたケーススタディを実施した。具体的には2003年4月8日に、東海地域に設置された気象庁の歪観測点の一つである三ヶ日観測点で、大地震前の前兆的すべりの可能性が疑われる急激な歪変化が観測された事例について、各種資料や当時の関係者へのヒアリング等を通じて、情報発表のタイミングや内容を規定する要因について調査を行った。その結果、様々なノイズのある中、観測された歪変化をプレート境界でのすべりとして高い確度で説明できる解析結果が得られるかどうか、情報発信体系がどのようなものであるのかといった要因に大きく規定されていることが明らかになった。これらのことは、現在の南海トラフ地震情報においては、原因解明のための解析等に時間を要する現象が発生した場合、「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が何度も発表される可能性があることを意味し、評価の定まらない中で、社会に対してどのような情報発表の仕方をするのが適切なのか、その検討の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の核となる、シナリオ作成手法の理論的枠組みを構築できたとともに、大地震前の異常現象の発生やその評価判定シナリオ作成のための重要な基礎データを収集できた。また、初年度得られた成果は査読付論文として学術誌に掲載されるなど、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で得られたケーススタディの結果や過去に発生した地震等の事例を参考にしながら、異常現象の発生やその評価判定、臨時情報発表に関するシナリオを作成する。その上でメディア関係者とワークショップを実施し、こうした予測情報に対してどのような報道を行うかについて検討を行う。また、今般の新型コロナウィルス感染症に対する一連の社会反応は、南海トラフ地震臨時情報の発表がもたらす社会の動きを考える上で大きな参考となりうることから、その類似点等を検討した上で、報道の仕方を検討する際にこれらの知見を取り入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
南海トラフ地震情報に関するシナリオ作成において、本手法の方法論の体系化の実施が研究遂行上必要であることがわかったため、初年度計画していたワークショップを延期した。次年度は、地震発生シナリオの作成および、南海トラフ地震臨時情報が発表された際に考えられる報道のあり方に関するワークショップを開催する。また、その準備のための打合せ等も行う。
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