研究課題/領域番号 |
19K04966
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸田 圭一 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (70273521)
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研究分担者 |
馬場 康之 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30283675)
尾崎 平 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (40351499)
石垣 泰輔 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70144392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 都市水害 / ハザードマップ / タイムライン / 地下浸水 / 水難事故 / 数値シミュレーション / 水理実験 |
研究実績の概要 |
(1)複数の地下鉄路線や地下街を有して複雑な大規模地下空間を構成している大阪都市域を対象として、InfoWorks ICM のモデルを構築し、内水氾濫解析及び地下出入口における氾濫水の浸水過程や流入量の予測に関する検討を行った。解析結果から、地下空間への流入は,地下駅出入口からの流入量が最も大きくなり、地下街は地下鉄や地下駐車場と比べて氾濫水の流入は小さくなることが分かった。また、地下鉄における浸水被害者の数を数値的に推定することにより、各駅の浸水に対する脆弱性を示すことができた。 (2)IPCC の示すリスク概念(ハザード・脆弱性・曝露の三つの相互作用)に基づき、都市浸水対策の主たる目的である「生命の保護」「都市機能の確保」「個人財産の保護」の観点から評価項目を選定し、都市の浸水リスクを評価できるシステムを構築した。本システムは、意思決定者の方針に応じて、リスクマトリックスの設定、項目間の重み付けが可能であり、地先の脆弱性(重要度)と地域の浸水特性の両方を踏まえた評価ができることを確認した。都市浸水対策のリスク評価として有用なものと考えられる。 (3)地下浸水を想定し、縮尺1/6の人型模型を用いて水路実験を行い、流水中の人体に掛かる力を、水路幅を変化させて計測した。特に狭い地下通路内での浸水時の人間の漂流危険性について検討した。詳細な実験データをもとに漂流限界指標となる危険流速―水深判読図を作成した。幅の狭い通路で座位の姿勢をとった場合には、水深がせき上げられ、上下流の水圧差から抗力が大きくなること、浮力が増加して抵抗力が小さくなること、の二つの理由から水難事故発生の危険流速がより小さくなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)数多くの地下鉄路線や地下街を有した大規模地下空間を構成している大阪都市域を対象として、InfoWorks ICM のモデルを構築し、地上と地下の浸水を同時かつ詳細に扱えるモデルを構築することができた。これにより、内水氾濫解析及び地下出入口における氾濫水の浸水過程や流入量の予測に関する検討を行い、極端な集中豪雨発生時の氾濫リスクの評価が可能なことを確認した。このモデルにより、外水氾濫も含めた様々な外力に対する検討が可能となる。またタイムラインを考慮した地下浸水対策や各地下鉄駅における避難確保計画策定のための基礎情報の提供が可能となる。 大都市域での詳細な水害ハザードマップ、地下浸水も含めたタイムライン検討の基礎が築かれたと考えられる。 (2)地下浸水が発生すると、狭い通路では通常の河川や用水路よりも人が流されて水難事故にあう危険性が一層強まる。今回縮尺1/6の人型模型を用いて水路実験を実施し、模型に作用する流体力を計測し、摩擦力による抵抗力との大小から、人間が流されるかどうかを検討して、漂流限界指標となる危険流速―水深判読図を作成することができた。 この指標を様々な条件下での数値解析結果に適用することにより、地下浸水時の危険性をより詳細に示すことが可能となり、今後、地下浸水時のハザードマップの高度化につなげることができる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)氾濫時の大都市中心部のタイムライン(メガシティー水害タイムライン)の検討:開発を進めてきた地上・地下を統合したシミュレーション解析モデルを基に、大阪市梅田地区を対象に、地上ならびに大小様々な地下空間に氾濫水が浸入した際の浸水特性を詳細に把握する。内水氾濫に加えて外水氾濫などについても検討を加える。また代表的な地下街をとりあげ、時間変化を考慮しつつ、どのように止水板を設置していくのが効果的か検討を進める。さらに地下鉄駅については、浸水被害想定者数をもとに、時系列的な「避難確保計画」について検討を進める。 (2)メガシティーハザードマップの作成ならびにその高度化 地上・地下を統合したシミュレーション解析モデルを基に、特に地下空間での流速や水深の時間変化を詳細に解析し、また漂流限界指標などを適用することにより、早期避難の重要性や危険箇所をいっそう浮き彫りにしていく。 さらに、浸水時の水難事故の危険性を明らかにするために、実物に近いスケールでの人体模型を用いて、人間が転倒した際の脳震盪や頭蓋骨骨折の可能性について、衝撃力を実験で求めることにより検討してみる。そして得られる知見をハザードマップのなかに重要な情報として組み入れることを試みる。
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