研究課題/領域番号 |
19K04967
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇津木 充 京都大学, 理学研究科, 助教 (10372559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 空中磁気観測 / ドローン / 磁場時間変化 / 九重火山 |
研究実績の概要 |
阿蘇火山における火山活動の活発化により、当初予定していた阿蘇火山における観測研究に代わり、九重火山におけるドローン観測の結果を用いて磁場時間変化検出を試み、その計算スキームを提案した。
九重火山では、1995 年の水蒸気爆発以来磁場連続及び繰り返し観測点が行われ、九重硫黄山西側の地下浅部(数百m) にソースを持つ顕著な磁場時間変化が観測されている。九重火山では2004 年12 月に硫黄山周辺部において高密度空中磁気観測が京都大学により実施された。この観測では、有人ヘリコプターに磁力計を曳航させ硫黄山周辺の2km x 2km の領域で上空(対地高度およそ150m)から磁気異常(磁場全磁力)を観測した。2004 年の観測時からの磁場時間変化を検出する為に2019 年10 月に硫黄山周辺でドローンを用いた空中磁気観測が実施された。本観測では(有)テラテクニカ社のドローン空中磁気測定システムGSMP35U-DRを用いて全磁力の測定を行った。この観測システムを用い硫黄山周辺の東西約1km、南北約2kmの領域において、海抜高度1750m の一定高度で空中磁気観測を行った。
本研究では、Nakatsuka and Okuma (2006) の拡張交点コントロール法を元にした磁場時間変化の解析手法を開発し(宇津木ほか,2021)、九重火山の2004年及び2019年のデータを用いて磁場時間変化の解析を行った。この結果硫黄山上空で地上観測の結果と調和的な時間変化が検出された。この解析結果を元に、時間変化の原因となるソースの位置、形状を磁場三次元インバージョンの手法(Utsugi, 2019) を用いて見積もった。その結果、硫黄山の地下400m付近に重心を持つ領域で磁化増加が起こったことが示された。これは橋本ほか(2002)が地上観測結果から見積もったソース位置と調和的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、ドローンなどの無人機による磁場観測が盛んにおこなわれるようになってきた。これらの観測では、GPSで飛行位置をコントロールしながら観測が行われるため、一定高度で等間隔な非常にきれいな航跡でデータを取得することが可能になっている。しかし、火山における数年~十数年にわたる磁場時間変化をターゲットとする場合、近年のドローン観測データと比較できるのが、以前の有人機による観測データとなる。特に火山の場合、狭い領域で、且つ地形が急峻な領域で観測が行われるため、各側線ごとの高度もまちまちで、測線間隔も不規則なデータである場合が多い。そのため、異なる高度、且つ異なる測線のデータを比較する必要が生じる。 こうしたデータから、測定位置の違いによる磁場値の違いを補償し、火山活動起因の磁場時間変化を抽出する方法として、Nakatsuka and Okuma(2006)の拡張交点コントロール法が提案されている。本研究では、この方法を更に一般化し、磁場時間変化を抽出する方法を開発した(宇津木ほか、2021)。この方法では、スタティックな磁気異常分布、及び磁場時間変化を表現する等価ソースを連立させ、且つNakatsuka and Okuma(2006)の手法を応用し、2つの測線の交点に着目して上記2種の等価ソースを求める方法を提案した。且つ、スパース正則化を応用した磁化構造インバージョン手法を開発し、求められた磁場時間変化からソースの位置、形状を求めるための計算方法を開発した。 これにより、本研究で目的とした、無人機による磁場観測から火山活動に起因する磁場時間変化を抽出するというテーマについて、その具体的な計算方法を確立した、且つ、その変化をもたらすソースの位置、形状の推定を行うための計算スキームを構築した事で、火山活動のモニタリングに対するより実際的な情報を得ることが可能になると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度に於いては、九重火山における計算結果を論文にまとめる。計算方法の提案と、その実際の適用例として、本研究で行われた計算結果を公表する予定である。 これにより求められた磁場変化源のインバージョン結果については、九重火山における2004年及び2019年のスタティックな構造解析も併せて行い、磁場変化源で地球物理学的、地球科学的にどのような熱的状態変化が生じていたかを議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大と、阿蘇火山における火山活動活性化に伴う火口近傍への立ち入り規制の影響により、阿蘇火山で計画していた観測の実施が困難となった。 研究対象を、阿蘇火山から、顕著な磁場時間変化が観測されてきた九重火山に変更し、以前にドローンを用いて行われた観測データの解析を行った。最終年度において、解析の実施、研究打ち合わせおよび論文出版を行い、これらの経費として当研究の研究費を当てることを予定している。
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