研究実績の概要 |
今年度に於いては、空中磁気観測から火山活動起因の磁場変化を検出する事を目的とした解析手法の構築を行った。本研究では九重火山に於いてドローンを用いた空中磁気観測を2019年度に行ったが、この観測は、活発な噴気活動が継続している九重硫黄山を含む東西1km、南北2kmの領域において行われ、ドローンに搭載された磁力計(ポタジウム光ポンピング磁力計)により全磁力観測が行われた。これにより得られた全磁力異常と、2004年に有人ヘリコプターを用いて行われた全磁力観測結果との比較から、2004年-2019年の間に九重硫黄山周辺で生じた磁場時間変化の検出を試みた。本解析に於いては、それぞれの磁場観測の観測高度が異なっていたため、これらの観測データに、二つの期間に於いて不変である背景磁気異常項と、火山活動起因の時間変化項とを足し合わされたものが含まれると仮定し、ポテンシャルデータの上方接続の方法を用いて観測点高度の補正を行うと同時に、背景磁気異常項と時間変化項を分離する事を試みた。この解析では、背景磁気異常と時間変化とが相関を持たないとする、スパース正則化方法を応用した解析手法を開発すると共に、確率的勾配降下法及びFOBOS(FOrward Backward Splitting, Duchi,2009)といった解析手法を導入し、効率的かつ高精度な磁場時間変化検出のための計算スキームを開発した。このスキームは、今回の観測データに限らず、何らかの理由で高度が異なってしまった繰り返し空中磁気データ全般に適用できる汎用的な計算方法である。これらの手法を用い、2004年-2019年の間の磁場時間変化を検出することに成功し、且つその変化のパターン及び振幅は、地上観測から得られた結果と調和的であった。同時に、得られた時間変化データから、スパースインバージョン手法を用い、磁場変化源一の推定を行った。
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