代表的な水害防備林のうち、富士川水系の万力林、阿賀野水系の「オッチラカシ水防林」、広い高水敷で土砂堆積効果のあるとされる富士川水系の雁堤、山地から海域へ直接流下し洪水氾濫時に土砂や流木が氾濫しやすいと考えられる事例として大村湾沿川の中小河川群についての現地巡検、また、秋に広範に発生した水害を対象にして千曲川水系、鳴瀬川水系、阿武隈川水系、久慈川水系、那珂川水系、養老川水系の現地調査を実施した。これらのうち、近年水害実績のないところでは氾濫物質の痕跡(土砂、流木、ゴミ)が確認できたもののその時期が判然としなかったが、水害被災地では堤内地への土砂氾濫のソースが、破堤堤体や堤防付近の地盤の洗堀に由来しているものも確認された。一部の水害調査地においては、堤内地の地物が土砂やゴミの氾濫を捕捉し、広範囲への拡散を抑制していると思われる事例も見られた。これらの情報を参照にしながら、河道と氾濫域を模した水理模型実験を実施した。比較条件として流木の有無、河川横断構造物の影響も考慮するために橋梁の有無を組み合わせた。実験では特定の河川を想定していないが、1/100スケールで河道と氾濫域の接続部に堤体模型を設置し、越流とともに堤体から土砂が氾濫するようにした。橋脚の設置により、洪水位の上昇が早くなり越流量が増加するとともに、流木の流下が欄干へ捕捉されることでこの作用を増強することを確認し、破堤規模を大きくすることに伴って堤体由来の土砂氾濫量を増加させることが把握できた。氾濫域での堆積土砂分布は水理条件によらず破堤口の中央よりもやや上流側で多く堆積することが分かった。
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