研究課題/領域番号 |
19K04969
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
梶谷 義雄 香川大学, 創造工学部, 教授 (80371441)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 土地利用計画 / 都市経済モデル / 経済被害 |
研究実績の概要 |
2020年度は、土地利用規制の影響を把握するための都市経済モデルの構築を行うとともに、実証データの取得を試みた。地域として香川県高松市を取り上げ、過去の地価データ、都市計画区分、人口、事業所分布(産業別従業員数)、中心部からの距離等に関するデータを500mメッシュのスケールで整備し、地価を説明する統計モデルを構築した。さらに、年齢層別人口の転出、転入数や市内での住居移動割合を仮定し、土地利用規制がない状態において、人口の空間分布の変化をシミュレーションした。その結果、新築一軒家に対する家計の選好の設定方法などの課題を明らかにした。次いで、被害軽減効果を分析するための経済的影響の評価方法について検討を行った。2019年度は、2018年西日本豪雨時の事業所被災データを活用し、資産の被害割合を確率的に予測するモデルの構築を行ったが、本年度は同データを用い、浸水した事業所の間接的な影響を評価するためのモデル構築を試みた。特に、被害状況に応じた復旧日数を確率的に評価するために、生存解析でよく用いられている複数の確率分布を検討し、適合度の高いワイブル分布を暫定的な最良モデルとして採用した。本モデルの説明変数としては、浸水深、ガス・交通途絶、資金調達状況、委託振替生産実施の有無、従業員数等の変数が5%の水準で有意となった。一方、元の操業能力への復旧を断念するような事業所も多数存在し、そのような事業所は浸水深、土砂災害などの物的被害に係る要因や対象事業所周辺の被害の状況の代理変数とも考えられる電気の途絶日数に加えて、運転資金の不足が大きく影響を及ぼしていた。以上の知見は、復旧のレベルを判断する第一段階のモデルと復旧日数を予測する第二段階のモデルとして整理し、営業損失の暫定評価モデルとして取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土地利用変化の実証的な分析に着手するとともに、2018年の西日本豪雨の経済影響の解明も進み、土地利用規制効果の評価モデルができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、エージェントベース型の土地利用変化のシミュレーションモデルを構築する。国内における被災地域、土地利用規制が行われている地域、土地利用の線引きが廃止された地域等に適用し、モデルの検証を行うとともに将来予測を通じて減災優先型の土地利用計画についての政策的知見を導出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会発表や専門家ヒアリングのための訪問等を次年度の活動に回したため。
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