本研究は路肩に形成される雪堤の崩れ防止対策を考える上で必要となる、雪堤崩れに関わる力学的特性量と各種影響因子の関係を明らかにすることを目的とする。一般に雪堤は複数回の雪の積み上げによる多層構造になっているが、実際の雪堤を使って実験を行うことは現実的に不可能であるため、調査対象部位として、「雪層内部」と「2つの雪層の境界」の2か所に着目し、それぞれの部位を単純化して模した実験室規模の雪層モデルを使って、主としてせん断強度と影響因子の関係を調べる。 本来であれば天然雪を試料として用いるべきところであるが、天然雪は安定して採取すること、および雪質・雪性状を特定の状態に制御することが難しいため、代わりに製氷機による氷を削って作成した人工雪を用いた。雪質としては、最も安定した性状のものとして得られるざらめ雪とした。 せん断強度は荷重と変位を同時に測定できる強度試験装置で測定した。 影響因子としては、①雪堤に積み上げられてからの経過時間、②加圧力(積み上げ高さ分の自重に相当)、③含水状況、の3つを取り上げて調べた。 雪層内部のせん断強度は含水率が低い状態では時間経過とともに増加するが、含水率が高いと変化が認められないこと、2つの雪層の境界のせん断強度は加圧力が低い状態では時間経過による変化が認められないが、積雪1m相当の加圧力が働く場合には時間経過とともに増加することが分かった。 これらの結果から、雪層の強度には含水率が影響し、含水率が高いと強度が低下して弱層となる可能性があること、雪層境界面の強度には加圧力が影響し、加圧力が小さい、すなわち雪堤上部ほど雪層境界面での滑りが発生しやすいことが示唆される。
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