研究実績の概要 |
形状記憶合金における熱弾性型マルテンサイト変態の潜熱量は、ニッケルチタン合金で最大 28 J/gが文献値である。従来、潜熱の最大化の条件は研究されていなかったので、本研究では示差走査熱量計(DSC)を用いて、さまざまな組成と加工熱処理を行ったニッケルチタン形状記憶合金の変態潜熱を測定し比較した。ニッケル組成が48.0, 48.5, 49.0, 49.5, 50.0, 50.5, 50.7, 51.0 at.%(原子パーセント)の組成の試料について、大きな潜熱を得るための条件として以下の結論を得た。 (1) β相で均質化熱処理後の試料に比較して、超弾性や形状記憶効果の最適化のために加工熱処理を行った試料では変態潜熱は減少した。 (2) β相均質化熱処理後の試料では、変態潜熱は50.0 at.%の組成で鋭い最大値のピークを示し、その値は平均 37 J/g であった。48.0 at.% Ni で32 J/g であり、51.0 at.% Ni で10 J/gであった。 潜熱蓄熱効果の応用例を具体的に示すことを目的として、ニッケルチタン合金繊維をアルミニウムブロックの中に分散して、その下端に熱源を接し、上端を強制空冷するヒートシンクを考案し、その伝熱特性を数値解析した。熱源はCPUで,強制空冷はファンを模擬したモデルである。熱源に一定の発熱量を持たせて、その温度を有限要素法で計算した。アルミブロックやファンがなければ温度は一定速度で上昇する。ニッケルチタン合金ワイヤの配置と体積分率を変えて冷却能率を比較した。その結果、有効な冷却効果のためには,合金ワイヤの分率と配置には最適解が存在することを示した。
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