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合金のマルテンサイト変態は一次相転移であり潜熱を発生する。本研究計画は，形状記憶合金がマルテンサイト変態において発生する潜熱の大きさに着目し，その物性と工学的応用について検討し，以下の成果を得た。
１．マルテンサイト変態の潜熱を利用した形状記憶合金の固体蓄熱効果を提案した。様々な合金系における潜熱の値を文献調査によって収集したところ，最も大きい潜熱はニッケルチタン(NiTi)合金であった。49.0～51.0at.%Niの組成のNiTi合金について熱測定を行い 36 J/ｇの潜熱を計測した。この値は文献値を含めて最大であり，単位体積当たりの潜熱であれば，蓄熱研究が先行している酸化物系のVO2 とTi3O5 と同等であることがわかった。
２．蓄熱材料のモデルとして多数のNiTi合金ワイヤをアルミニウムに埋め込んだ複合材料を試作した。複合材料の底面から一定の熱流を与えた時の上面の温度変化を有限要素法で伝熱解析し，温度の上昇速度が遅くなることを確認した。さらに，この複合材を試作して示差熱測定を行って同様な結果を得た。
３．形状記憶合金は潜熱を用いて形状記憶効果による仕事を行うことでアクチュエータの機能を持つ。NiTi合金を用いてばね型のアクチュエータを試作し，通電加熱による投入電力と外部仕事を測定し、熱機関としての効率を検討した。
４．マルテンサイト変態において，母相とマルテンサイトが共存状態であると潜熱の非定常熱伝達が起こるはずであるので，CuAlNi合金単結晶の表面温度を熱カメラで撮影した。単結晶のマルテンサイト変態は，最小構成要素であるバリアント対が同じプレートグループで集合してドメインを形成し，変態の進行に伴ってドメイン毎に温度が異なることを熱画像から確認した。マルテンサイト変態はスケールの階層構造を形成し，非定常熱伝達を考慮した理解が必要であることが明らかとなった。
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