研究課題/領域番号 |
19K04983
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
河野 義樹 北見工業大学, 工学部, 助教 (20634413)
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研究分担者 |
光原 昌寿 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (10514218)
眞山 剛 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (40333629)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ひずみ再分配 / イメージベース結晶塑性解析 / Slip operation factor |
研究実績の概要 |
本年度は,まず,αチタン多結晶体の微視組織画像を直接用いた変形解析(イメージベース結晶塑性解析)を実施し,i)解析環境の妥当性の検証と,ii)結晶粒間の相互作用によって生じるひずみの集中機構(ひずみの再分配)について調査した.i)の検証は,解析と実験により得られた結晶粒レベルでのひずみ分布を比較することで行った.各すべり系の臨界分解せん断応力(CRSS)を変化させながら解析を実施したところ,CRSSの比が,底面:柱面<a>:錐面<a>:錐面<c+a>= 1.0:1.0:1.3:≧2.0の時,解析結果は実験結果と良い一致を示した.本CRSSの比は,Warwick et al.(Acta Mater.,60,2012)が予測した商用純チタンのCRSSの比と比較的近い値であった.ii)の調査では,よく知られている通りに,隣接する結晶粒間に働く力学的な相互作用があることを確認した.更に,この結晶粒間の相互作用によって,局所的なひずみの集中が起こることを確認し,これには隣接する結晶粒間だけでなく,より長範囲の相互作用が影響する可能性があることが明らかとなった. 次に,結晶粒間の相互作用の強さや距離を定量的に調査するために,Slip operation factor(SOF)と称する評価指標を構築した.SOFは,Schmid因子と各すべり系のCRSS,相互作用距離の関数であり,領域間の力学的相互作用を考慮したすべり変形の起こりやすさを評価できる指標である.SOFを用いてαチタン多結晶体の変形の起こりやすさの空間的な分布を作成し,結晶塑性解析で得た変形初期におけるひずみ分布と比較したところ,両者は良い一致を示した.以上の結果は,ひずみの再分配によるひずみの集中機構の一端を明らかとし,更に,結晶粒間の相互作用の強さや距離を定量的に評価する環境を構築したことを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに,αチタンにおける結晶粒間相互作用によって生じるひずみの集中機構の調査が進展しているため,"おおむね順調に進展している”と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,結晶粒間の相互作用とひずみ再分配を定量的に評価する予定である.しかしながら,研究計画の一部変更も視野に入れている.具体的には,当初は,研究1年目にα相同士の相互作用の検討,研究2年目にα相とβ相の相互作用を検討する予定であったが,これを変更し,α相同士,あるいはα相とα+βコロニー間の相互作用の調査を実施する可能性がある.理由は,以下の2つである.i)β相の寸法や形状,化学成分等の状態によって,α相中のβ相の力学特性は極めて複雑に変化するため,α相とβ相の力学的相互作用を定量的に評価することが難しく,α+βチタン中のβ相に関する知見も十分には得られていないことから,将来的な課題とすべきであると考えたためである.一方,α+βコロニーの塑性変形抵抗を調査した報告はいくつか存在する.ii)結晶粒間の相互作用は,隣接する結晶粒間だけでなく,より離れた領域同士でも起こり得ることが示され,相互作用は極めて複雑であり,α相とβ相の相互作用の前に,α単相での結晶粒間の相互作用を明らかにすべきとの考えに至ったためである.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より旅費および物品費を抑えられたため,予算を次年度に持ち越すことになった.コロナウイルス対策で打合せを一部Web会議とすることを考えており,持ち越した予算は,Web会議に使用する物品(マイク等)の購入に充てる.
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