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2020 年度 実施状況報告書

ペロブスカイト型Fe酸化物を用いたp型およびn型高温熱電材料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K04986
研究機関横浜国立大学

研究代表者

中津川 博  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40303086)

研究分担者 齋藤 美和  神奈川大学, 工学部, 助教 (60594215)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードペロフスカイトFe酸化物 / 熱電特性 / 無次元性能指数 / エネルギー変換効率 / n型素子 / p型素子 / 熱電変換材料 / スピン状態
研究実績の概要

近年、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる熱電材料は、廃熱などの未利用熱を回収し再有効活用可能なエナジーハーベスティングとして注目を集めている。現在、最も広く実用化されている熱電材料はBi2-xSbxTe3 (p型)やBi2Te3-xSex (n型)などのBi2Te3系半導体であるが、これらの材料は比較的毒性が高く、酸化環境下では化学的・物理的な安定性に乏しいという欠点がある。そこで、資源的に豊富で毒性の低い元素から構成され、高温・酸化環境下でも比較的安定な環境調和型材料として、酸化物系熱電材料が注目を集めている。しかしながら、酸化物系熱電材料は、Bi2Te3系半導体のように、同一母相或いは同一結晶構造でp型およびn型の高い性能を示す材料が未だ見つかっていない。
そこで、p型およびn型の高い性能を示す可能性のある酸化物としてペロブスカイトFe酸化物に着目し、Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.7)を研究した。その結果、x=0.1でZT=0.024(T=850K)の比較的高いp型熱電特性を示すが、n型熱電特性は現状ではx=0.7でZT=0.002(T=850K)を示すに留まっている。
従って、本研究は、Fe3+のスピン状態を制御し中間スピンFe3+が多数を占めるペロブスカイトFe酸化物を作製して、そのp型およびn型熱電特性を明らかにし、更なる高い熱電特性を示すペロブスカイトFe酸化物を探索することを目的としている。本研究によって、p型およびn型の高い性能を示すペロブスカイトFe酸化物が発見されれば、高温・酸化環境下での熱電発電のエネルギー変換効率向 上に貢献するだけでなく、喫緊の課題である持続可能社会の促進をもたらす材料の実用化に、新しい展開がもたらされるものと期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2019年度は、Nd1-xSrxFeO3とSm1-xSrxFeO3多結晶試料を固相反応法を用いて作製し、X線回折装置 (SmartLab, 現有設備) を用いて粉末X線回折測定を実施し、RIETAN-FPを用いたリートベルト解析により結晶構造を同定した。また、磁化率測定は5~700KでSQUID (S700X-R:現有設備およびMPMS:東京大学物性研究所共同利用) を用いて実施し、各組成のFe3+およびFe4+のスピン状態を明らかにした。更に、室温以下でホール効果測定装置(ResiTest8300:現有設備)、室温以上で自作測定装置 (現有設備)を用いて抵抗率とゼーベック係数を測定し、熱定数測定装置 (TC-7000:現有設備)、比重測定キット (SMK-401:現有設備)、および、示差走査熱量計 (X-DSC7000:神奈川大学)を用いて熱伝導率を測定して、各組成の無次元性能指数を明らかにした。
2020年度は、Nd1-xCaxFeO3とSm1-xCaxFeO3多結晶試料を固相反応法を用いて作製し、X線回折装置 (SmartLab, 現有設備) を用いて粉末X線回折測定を実施し、RIETAN-FPを用いたリートベルト解析により結晶構造を同定した。また、磁化率測定は5~700KでSQUID (S700X-R:現有設備およびMPMS:東京大学物性研究所共同利用) を用いて実施し、各組成のFe3+およびFe4+のスピン状態を明らかにした。更に、室温以下でホール効果測定装置 (ResiTest8300:現有設備)、室温以上で自作測定装置 (現有設備)を用いて抵抗率とゼーベック係数を測定し、発電効率特性評価装置 (PEM-2:防衛大学校)を用いて熱伝導率を測定して、各組成の無次元性能指数を明らかにしたが期待されるような熱電性能は得られなかった。しかし、中性子回折装置(MEREDIT:Nuclear Physics Institute in Czech Republic)を用いた粉末中性子回折測定により、室温でNd1-xSrxFeO3がG型反強磁性を取っていることを確認した。

今後の研究の推進方策

2021年度は、Nd1-x(Ca1-ySry)xFeO3を固相反応法を用いて作製し、X線回折装置 (SmartLab, 現有設備) を用いて粉末X線回折測定を実施し、RIETAN-FPを用いたリートベルト解析により結晶構造を同定し、中性子回折装置(MEREDIT:Nuclear Physics Institute in Czech Republic)を用いた粉末中性子回折測定を実施し、GSAS-IIを用いたリートベルト解析により磁気構造を同定する。また、磁化率測定は5~700KでSQUID (S700X-R:現有設備およびMPMS:東京大学物性研究所共同利用) を用いて実施し、各組成のFe3+およびFe4+のスピン状態を明らかにする。更に、室温以下でホール効果測定装置 (ResiTest8300:現有設備)、室温以上で自作測定装置 (現有設備)を用いて抵抗率とゼーベック係数を測定し、発電効率特性評価装置 (PEM-2:防衛大学校)を用いて熱伝導率を測定して、各組成の無次元性能指数を明らかにしたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] Nuclear Physics Institute/Department of Neutron Physics/MEREDIT(チェコ)

    • 国名
      チェコ
    • 外国機関名
      Nuclear Physics Institute/Department of Neutron Physics/MEREDIT
  • [雑誌論文] Thermoelectric Properties of Heusler Fe2TiSn Alloys2020

    • 著者名/発表者名
      H. Nakatsugawa, T.Ozaki, H.Kishimura, and Y. Okamoto
    • 雑誌名

      Journal of Electronic Materials

      巻: 49 ページ: 2802-2812

    • DOI

      10.1007/s11664-019-07855-7

    • 査読あり
  • [学会発表] ペロブスカイト酸化物Sm1-xSrxFeO3の熱電特性2020

    • 著者名/発表者名
      中津川博, 風間竣太, 齋藤美和, 岡本庸一
    • 学会等名
      応用物理学会 春季(第67回)学術講演会

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公開日: 2021-12-27  

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