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2020 年度 実施状況報告書

二元共晶合金でのスフェルライト構造の探索と力学特性発現のメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K04987
研究機関愛媛大学

研究代表者

松下 正史  愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90432799)

研究分担者 飯久保 智  九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (40414594)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードマグネシウム合金 / アルミニウム合金 / 高温高圧 / 第一原理計算
研究実績の概要

(1) Mg-Zn-Y系への圧力印加によるfcc/hcp二相組織の形成:Mg85Zn6Y9は常圧下では LPSO構造を取るが、3GPa以上の高圧高温下ではfcc/hcp二相構造をとることを事前の研究で明らかにしている。凝固組織は、圧力の増加に伴いラメラ組織から、コア部にMg richの相をもち、放射状に約100×100nmの断面をもつコラム状結晶が発達するスフェルライト型組織へと変化する。実験的研究では、圧力の増加に伴いfccに含まれるZnとYの組成が増加した。構造、組織の変化を明らかにすべくMg-Zn-Y三元合金について、ATATとVASPを用いた第一原理計算を実施し、hcpとfccの安定性を評価した。計算結果から、高圧下ではLPSOはhcpとfccへ高温で二相分離する傾向が示唆された。さらに、圧力の増加に伴い、fccへのZnとYの固溶度が増大し、fcc構造が安定化する傾向がみられた。この結果よりスフェルライト型組織で見られる放射状の組織の連続的な組成変化は、圧力の増加に伴うfcc組成領域の増大に伴うものと解釈される。
(2) Mg-M-Yb系の析出相中の共晶組織と結晶構造:Mg97Zn1Yb2合金を600℃から水中に急冷することで、析出物中にhcpと新奇な長周期超格子を二種類を新たに発見した。1種類は、HAADEF-STEM観察の結果から、α-Mgの基本格子に対し、a軸は7倍、c軸は2倍の長周期超格子である。二つ目は、a軸はα-Mgの7倍であるが、c軸についてはα-Mgのn倍をとらない。超構造ともc軸をhcpの共軸とする。
(3) Al88Si12共晶合金への圧力効果:圧力にの増加に伴い共晶点はSi-rich側にずれる。共晶組織は100nm厚のラメラ組織となり、Al中のSiの固溶度は増加する。硬さ、曲げ強さ共に著しく増大し、双方とも、常圧鋳造材の約3倍に達する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「スフェルライト型の二相組織がなぜMg-Zn-Y系で形成されるのか?」という問いに対する解に、実験と計算のcombination studyで着実に迫りつつある。代表研究者(愛媛大 松下)と分担研究者(九工大 飯久保)が直接会う機会がコロナ禍によって大きく制限されてしまっているが、Zoomなどで頻繁に議論しながら研究を進めることで、進捗を遅らせることなく進めることができている。
また、マグネシウム合金中に共晶とともに発生し、整合関係をとる相を本研究課題実施中に3種発見してきていることは評価できる。1種類についてはJALCOMに2020年に発表しているが、残り二種についてはまだである。速やかに成果公表を行いたい。
Al系合金でも共晶系への圧力効果として、きわめて微細な組織が形成され、強度が著しく上昇することを明らかにしており、計画通りの実験が進められ、成果も伴ったものとなってきている。高圧で形成された組織形態が、Mg-Zn-Y系でみられるスフェルライト型との違いは、共晶する相の組成上の連続性に関わると考察を進めており、残り一年でまとまった論文としての発表が可能な段階に差し掛かっている。

今後の研究の推進方策

(1) Mg-Zn-Y系への圧力印加によるfcc/hcp二相組織の形成:本課題については、順調に進んでおり、今年度は第一原理計算結果と実験結果を合わせた論文発表を行う予定である。
(2) Mg-M-Yb系の析出相中の共晶組織と結晶構造:Mg97Zn1Yb2で新たに発見した二つの長周期相について論文発表を行う。本合金では、高圧場、常圧急冷場を通して、当グループにて、α-Mg構造を基本構造とする4種の構造を発見している。これら4種の構造間の関連性についての研究を進める。
(3)Al-Si共晶系への圧力効果:昨年度の研究において、強度が約3倍に上昇することが明らかになった。このような上昇がなぜ生まれるのか?という問いに答えるべく、実験的研究を進めて、年度内に論文を作成する予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍に伴う一部出張の中止に伴いわずかながら、残額が生じた。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A novel long-period phase in Mg97Yb2Cu1 alloy2020

    • 著者名/発表者名
      Teruki Tsuchiya, Masahiro Fukuda, Hiroaki Ohfuji, Michiaki Yamasaki, Yoshihito Kawamura, Masafumi Matsushita
    • 雑誌名

      Journal of Alloys and Compounds

      巻: 844 ページ: 155972-1-6

    • DOI

      10.1016/j.jallcom.2020.155972

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Research for Long-Period Structure in Mg Alloy using High Pressure2020

    • 著者名/発表者名
      MATSUSHITA Masafumi
    • 雑誌名

      The Review of High Pressure Science and Technology

      巻: 30 ページ: 178~186

    • DOI

      10.4131/jshpreview.30.178

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 多分野に広がる高圧装置と技術2021

    • 著者名/発表者名
      松下正史
    • 学会等名
      45回 未来を拓く高圧力科学技術セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 高圧下凝固プロセスで作製された Al/Si ナノラメラ組織とその機械特性の研究2020

    • 著者名/発表者名
      國光 弘平, 國谷真広, 新名 亨, 肥後 裕司, 松下 正史
    • 学会等名
      第61回 高圧討論会
  • [学会発表] LPSO からの圧力相転移で発生する fcc/hcp 二相組織の強度特性と第一原理計算による相安定性の研究2020

    • 著者名/発表者名
      田中 伸治, 川端 勇輝, 國光 弘平, 中田 雄大, 村上 湧斗, 河野 翔也, 飯久保 智, 新名 亨, 山崎 倫昭, 河村 能人, 肥後 裕司, 松下 正史
    • 学会等名
      第61回 高圧討論会
  • [学会発表] Mg97Zn1Y2 への高圧処理の影響と, hcp-matrix 周辺での LPSO 再形成過程の研究2020

    • 著者名/発表者名
      下司 成人, 福田 雅大, 大藤 弘明, 山崎 倫昭, 河村 能人, 松下正史
    • 学会等名
      第61回 高圧討論会
  • [学会発表] 高圧下凝固プロセスで作製されたAl/Si微細共晶組織とその機械特性の研究2020

    • 著者名/発表者名
      國光弘平, 國谷真広, 松下正史, 新名亨, 肥後裕司
    • 学会等名
      第12回 軽金属学会中国四国支部 講演大会
  • [学会発表] LPSOからのfcc/hcp二相構造への圧力誘起相転移についての第一原理計算を用いたエネルギー安定性からの評価2020

    • 著者名/発表者名
      田中伸治, 中田雄大, 松下正史, 河野翔也, 飯久保智
    • 学会等名
      第12回 軽金属学会中国四国支部 講演大会
  • [学会発表] LPSOからの圧力相転移で発生するD03/hcp二相組織の形成過程と機械特性の研究2020

    • 著者名/発表者名
      川端勇輝, 國光弘平, 松下正史, 新名亨, 肥後裕司
    • 学会等名
      第12回 軽金属学会中国四国支部 講演大会
  • [学会発表] Mg-Zn-Ybで発見された新奇な長周期超格子2020

    • 著者名/発表者名
      福田雅大, 山﨑大輝, 松下正史, 大藤弘明, 西山宜正, JoesfBednarcik, 山崎倫昭, 河村能人
    • 学会等名
      第12回 軽金属学会中国四国支部 講演大会

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公開日: 2021-12-27  

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