研究課題/領域番号 |
19K04988
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
圓谷 貴夫 熊本大学, 大学院先導機構, 助教 (00619869)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / マグネシウム合金 / 電子状態 / 長周期積層構造 / 格子欠陥 / マルテンサイト / 溶質元素 / 原子空孔 |
研究実績の概要 |
本研究では、 次世代の自動車用薄板及び航空機の軽量化にむけて重要な材料であるマグネシウム合金と高層ビルの制震ダンパー材として用いられているFe-Mn-Si系形状記憶合金を主なターゲットとして、 第一原理電子状態計算手法に基づき積層欠陥(ショックレー部分転位)を含む構造(相)を安定化させる原因(鍵となるパラメータ)が何であるのかを解明することを目的に研究を進めている。令和元年度は、部分転位や空孔と偏析した溶質元素の関係性に着目し研究を進めた。長周期積層(Long Period Stacking Ordered: LPSO)構造を有するMg-M-RE合金の希土類元素(RE)をイットリウム(Y)に固定し、3d遷移金属(M)をCo, Ni, Cu, Znと系統的に変化させた場合に電子状態がどのように変化するのかを調べた。その結果、遷移金属の種類の選択によってフェルミ準位近傍の状態密度が系統的に変化することがわかった。電子顕微鏡による構造解析に基づき提案されたMg-Zn-Y 合金の結晶構造の元素組成比に対して、単体元素からZn の原子空孔を含む構造が安定に生成されるか否かを第一原理計算手法に基づき明らかにした。 Zn 原子空孔を含む各相に対して格子パラメータを含む構造最適化を実行し、標準生成エンタルピー(ΔH)を求めた。得られたΔHの組成依存性に基づく凸包曲線(Convex hull)を求め、3元系状態図と対応させることで熱力学的安定性を議論した。各空孔相においてはΔH の空孔配置に対する依存性も考慮し、原子空孔や溶質元素の配置を結晶構造の対称性を考慮することにより最小の計算パターンを抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LPSO構造を有するマグネシウム合金の相安定性の起源をミニマルな構造モデルを出発点に解明することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
第一原理計算手法に基づき, a) 広い組成範囲における構造の安定性と b) その相安定性の起源を解明するために電子構造の解析を継続的に行っていく. 今後、多種多様な金属材料へ適用していくには網羅的な(ハイスループット)第一原理計算と連携したプラットホームの整備が必要である。今後、原子空孔を含む熱力学的に準安定な構造に対する動的な安定性や自由エネルギーを定量的に求め、溶質元素の動的な安定性および役割を解明することも検討する。これまで合金設計にはCALPHADと呼ばれる熱力学データベースが用いられてきたが、準安定な結晶構造に対してはデータが圧倒的に不足しているという問題がある.本研究で得られた微視的な情報に基づきマクロな組織の予測や有限要素塑性解析へつなげることで高次の物性を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたクラスター計算機を次年度に購入することになったため、物品費の執行額に変更が生じた。旅費に関してはコロナウィルスの影響により3月に予定していた出張がキャンセルとなったため変更が生じた。
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