研究実績の概要 |
金属ガラスとは、ランダム原子配列構造を有する非晶質金属のことであり、通常の結晶金属と比べ、高強度、軟磁性、高耐食性など優れた機械的・磁気的特性を持ち、様々な応用研究が行われ実用化もされている。最近、我々の研究によって、高圧下で熱処理を行うことで超高密度化が起こることが見いだされた。この様な高密度化は、高硬度化・高強度化を伴う可能性が高い。 令和1年度では、高圧熱処理によって合成された高密度Zr50Cu40Al10金属ガラスの機械的特性の評価を行い、機械的性能に対する高圧熱処理の効果を評価した。高圧熱処理は、ベルト型高温高圧発生装置(物質・材料研究機構設置)を用いて様々な温度圧力(2.5, 5.5, 7.7 GPa, 約1000 Kまで)で行った。得られた高圧熱処理後の試料について、密度(アルキメデス法)、硬度(ビッカース硬度計)、強度・変形能(圧縮試験)、弾性的性質(体積弾性率、剛性率、ポアソン比等)(パルス・エコー・オーバーラップ法)を測定した。 測定結果によると、高圧熱処理温度の上昇に伴い各機械的特性の向上が見られ、約900 K付近で最大値を示し、一方で、より高温での熱処理では特性の低下が見られた。圧力の効果としては、2.5 GPaでの高圧熱処理よりも5.5 GPaの方が効果的であったが、5.5 GPaと7.7 GPaでは大きな違いは見られなかった。 機械的特性の最大値を示した5.5 GPa, 900 Kで高圧熱処理を施した金属ガラス試料をTEM観察したところ、数nmサイズのCuに富んだナノ結晶が形成されており、その体積率は約60%に及んでいた。通常、常圧下での熱処理ではZrに富んだ結晶が析出するため、高圧熱処理特有のCuに富んだナノ結晶化により、機械的特性の向上が見られたと考えられる。
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