研究実績の概要 |
令和3年度では、令和2年度に取得した放射光X線による局所構造データを用いて逆モンテカルロシミュレーションを行い、Zr系金属ガラスの高温高圧下での構造変化及び部分ナノ結晶化のメカニズム解明を試みた。 まず、5.5GPa, 800-850K付近で観察された局所構造の変化は次のとおりである。高圧熱処理前は、Zr原子とCu原子が不均質に分布し、局所的にはそれぞれの原子が集まったクラスターの様な領域も見受けられたが、高圧熱処理によりその様なクラスターは減少し、Zr原子とCu原子がより均質に分布するように変化することが分かった。つまり、Zr系金属ガラスは、高圧熱処理により、原子配列はランダムであるものの、化学的には均質な構造に変化することが分かった。 より高温まで熱処理を行った場合は、900K程度で部分ナノ結晶化が起こり、機械的特性が急激に向上したが、TEM観察によると、この際に晶出したナノ結晶はCu原子に富んだ結晶であることが分かった。一般的に、常圧下での熱処理によりZr系金属ガラスから晶出する結晶相はZr2Cuなど、Zr原子に富んだ結晶が第一相として晶出する。おそらく、800-850Kで、より化学的に均質な構造に変化したことで、Zr原子に富んだ結晶相が晶出しにくくなり、代わりに、高圧下でも高い移動能を有するCu原子が移動することでCu原子に富んだ結晶がナノ結晶として晶出したものと思われる。 以上より、より化学的に均質な原子配列にアレンジすることが、金属ガラスの機械的特性を向上させる要素になりえることが明らかになった。
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