研究課題/領域番号 |
19K04993
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
都留 智仁 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (80455295)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 固溶強化 / 転位運動 / 熱活性化過程 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
希少元素の代替材料開発は元素戦略の重要な研究であり、原子・電子構造に立脚した構造材料に対する強さとねばさの両立に向けた取り組みが推進されている。 本年度は、体心立方格子(BCC)合金に関する強度や変形に対する温度依存性について検討を行った。BCC構造を有する金属内の合金元素は固溶強化や軟化機構を発現し、その影響は温度や濃度に依存して複雑に変化する。ここで、らせん転位の運動は、キンクの形成と移動という熱活性化過程によって生じることから、転位運動に及ぼす局所構造の影響をキンク機構から捉えることに着目する。このとき、電子状態の寄与をキンク機構の活性化エネルギーとして熱活性化過程に導入する。このような熱活性化過程に基づく定式化により、転位の有限温度における運動と力学特性と関連付ける方法を提案した。 BCC金属では、転位運動はキンク機構に基づく熱活性化過程であるため、合金元素が活性化エネルギーに与える影響を直接計算し、温度と濃度および合金元素の種類に依存した力学特性を評価した。本研究では、タングステン合金を対象として、転位モデルの第一原理計算と固溶強化機構の理論モデルを組み合わせて合金元素の影響をユニバーサルに評価した。以上の様に、熱活性化過程を解析的に記述することが出来ると仮定すると、第一原理計算によって合金元素による活性化エネルギーへの寄与分を計算することで、マクロな力学特性を評価することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一原理計算を用いて直線転位の運動のエネルギー障壁を求めたものを、力学モデルの関係に導入し、合金元素を絞った場合に対して強度と温度・濃度の関係を明らかにすることができた。純金属の場合は温度に依存して降伏応力が低下することが分かる一方、合金系では濃度と温度によって、降伏応力が複雑に変化することを再現できており、当初の予定通り研究を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で提案した力学モデルにいくつかの仮定が含まれており、いくつかの転位運動に関係する物理定数を実験などから求める必要がある。これを回避するために、実際の転位運動に必要なパラメータを計算から求める方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
単年度の物品費で必要なスペックを持つ計算機の購入ができなかったため、次年度以降の物品費と合算して計算機を購入することを計画している。
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