研究課題/領域番号 |
19K04994
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鈴木 一行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70357276)
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研究分担者 |
平山 悠介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60617059)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱プラズマ / 永久磁石 / 金属ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
電気自動車(EV)の発展や電動航空機の実現のためのモーターの高出力化と高効率化には高性能永久磁石材料が欠かせない。我々は永久磁石材料合成において新規プロセスとして熱プラズマプロセスを提案する。本プロセスを永久磁石材料のSm2Fe17N3の合成に適用すると、大きな急冷効果(105-7 K/sec)と従来法を遥かに凌駕する冷却深度(過冷却効果)により、粒径約100 nm程度の単結晶粉末を得ることができる。その結果、室温での保磁力4 Tを現実にし、モーター等の使用温度域である150-200℃でも、現在最強の耐熱磁石であるDy入のネオジム磁石を遥かに凌駕する特性を有する。 初年度は熱プラズマ処理により、SmFe合金相として1-2相、1-7、2-17相の生成が確認できた。本年度は、窒化プロセスによるSm-Fe-Nの合成と微細構造解析による得られた粒子の観察に加え、磁場によるSm-Fe-N粉末の配向についても評価した。 窒素気流中で窒化されたSmFe粉は、粒子径は変化なく窒素はSmFe格子内に侵入しSm-Fe-Nが生成した。これはXRD測定から窒素の侵入により格子が膨張したことから確認できた。TEMによる微細構造解析の結果、XRD測定から明らかなようにSm-Fe-N合金相が確認できたが、これに加えFeがコアSm-Fe-Nがシェルであるコアシェル粒子も多数見ることができた。これはSmFeN/Feナノコンポジット磁石になり得る有望な粒子形態である。得られたSm-Fe-N粒子を磁場配向したところ、ナノ粒子であっても外部磁場によってc軸に沿って優先的に配向することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の目標は初年度に得られた熱プラズマプロセスを用いたSm-Fe合金単結晶ナノ粉末の(1)窒化処理によるSm-Fe-N粉末の合成可能性の評価と、(3)その異方性の評価を行った。また、粒子形態について(3)TEMによる微細構造観察を行った。以下それぞれについて詳細に述べる。 (1)熱プラズマ法で得られたSm-Fe粉末を窒素気流中で300-600℃で15分窒化処理を行った。 (2) 9Tの磁場下で磁場配向を実施し、磁場配向方向に対して垂直な面でXRD測定を行ったところ、(00m)面に由来するピーク強度が増大した。これはc軸が磁化容易軸であり磁場によって一軸配向したことが明らかとなった。従って、多くの粒子は単結晶粒子であることが示唆された。 (3)(2)によって平均的情報として、一軸異方性を有する単結晶粒子であることが示唆されたが、それでもすべての十分の配向性を得られたとは言い難い。そこで、TEMによる微細構造観察を行った。Sm-Fe-N合金相はもちろん確認できたが、SmFeNシェル/Feコア粒子が多数を占めていることが分かった。本形態はこれまでどのプロセスでも作製することができなかった形態であり、ナノコンポジット磁石になり得る有望な粒子形態である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究では、窒化処理によるSm-Fe-Nの合成と、その異方性について評価した。しかしながら、まだ異相としてFeが多く存在し、磁気測定で評価するには至っていない。今後は粒子形態制御技術を開発することにより単相Sm-Fe-NもしくはFeの大きさが十分に制御されたSm-Fe-N/Feナノコンポジット粒子の合成を目指す。これには、熱プラズマ反応場の制御に取り組む必要がある。また、ナノ粒子はマイクロスケールの粒子に比べて焼結性が向上するために、得られた粉末試料について焼結処理を施し、磁石としての形態で磁気測定、微細構造解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたよりも物品費を安く抑えることができたため未使用額が発生したが,引き続き,次年度以降も物品購入に使用する。
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