研究実績の概要 |
ホンダ・フジシマ効果を基礎として開発された光触媒技術は,有害化学物質の分解などの環境浄化や水分解などの持続可能な次世代のエネルギー技術として期待されている。本研究では,酸化チタンに代わる新規な光触媒物質として有望な可視光応答型ダブルペロブスカイト型酸化物半導体を創製し,その基礎物性を調査し,希土類イオンの価数共存状態と関連する異常な光触媒特性の機構解明を目的とする。2021年度は、Ba2Pr(Bi,Sb)O6に加え、PrサイトをTbに置換したBa2Tb(Bi,Sb)O6の元素置換した良質な粉末試料をサイトレイト法により作製し,結晶構造評価,磁気特性,電子状態,光学特性及び光触媒特性の評価を実行した。特に、Sb置換量とメチレンブルー分解の光触媒特性を最適化するために、機械学習の手法を採用した。さらに第一原理計算により当該物質の結晶構造から電子構造を推定し,元素置換によるバンドギャップ制御,混合原子価型元素のキャリア再結合抑制効果および試料作製プロセスに依存する結晶粒の組織制御の3つの観点から光触媒特性の高機能化の条件を解明した。 1.サイトレイト法作製により均一で微細な結晶粒を合成することが可能となった。特に結晶粒の微細化により比表面積が向上した。Sbの置換量に対する相図を作成し、低置換で単斜晶構造、高置換ドープで立方晶構造をとることが分かった。 2.磁気特性からPr及びTbイオンは3価と4価の価数共存状態をとり、この共存状態が電子とホールの再結合を抑制する電荷分離状態と密接に関係することがわかった。 3.IPA分解によるCO2生成やメチレンブルー分解の可視光照射の実験より、母物質は酸化型の触媒特性を示し、Sb高置換試料は還元型の特性を示すことが分かった。前者は価電子バンド端が酸化電位付近なり、後者は伝導バンド端が還元電位付近の存在することを示唆する。
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