研究課題/領域番号 |
19K04997
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
北浦 守 山形大学, 理学部, 教授 (60300571)
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研究分担者 |
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
石崎 学 山形大学, 理学部, 講師 (60610334)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 陽電子消滅 / シンチレータ / 結晶成長 / 結晶欠陥 |
研究実績の概要 |
本研究では、レーザーと電子ビームの垂直衝突によって発生する超短ガンマ線パルスを用いた陽電子消滅寿命分光法を開発し、シンチレータ結晶Ce:GAGGに含ま れる極微量欠陥の起源を解き明かすことに成功した。レーザー集光ミラーシステムの遠隔制御系や複数の光電子増倍管とループ回路からなる観測システムを新たに導入することで消滅ガンマ線の高いカウントレートを実現し、わずか5時間の測定で10の5乗をこえる全カウント数を実現できた。これにより従来は困難であっ た極端に弱い欠陥成分の検出が高い統計精度で可能になった。陽電子消滅寿命を詳細に解析した結果、Ce:GAGGおよびGAGG結晶には、Al/Ga単原子空孔とAl/Ga-O 二原子空孔が存在し、これらが寿命の長い陽電子消滅成分を与えることを明らかにした。また、Mgを共に添加すると、その陽電子消滅成分の相対強度が明らかに 減少することを見出した。Mgの共添加にはAl/Ga単原子空孔とAl/Ga-O二原子空孔を抑制する働きがあることを解き明かした。先行研究では、これら原子空孔が導入されることで、その電荷補償体として電子捕獲中心が導入され、その結果としてシンチレータ応用では好まれない燐光が生ずることを提案してきた。研究初年 度において得られた成果は、この仮説を裏付けるものであり、Ce:GAGG結晶の特性改善に対して有効な方法論を提案するものである。得られた研究成果は、学術論文(査読付き)1編、解説記事(査読付き)1件、国際会議招待講演2件、国内学会等招待講演1件、で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究期間内に研究成果を学術論文、解説記事、招待講演、によって公表することができた。また、Mg共添加効果の研究にも着手でき、その特性を解き明かす鍵となるデータを取得することができ、その一部を国際会議と国内学会にて発表し、学術論文として公表する準備に着手している。この研究では、Mgの共添加サイトがどこなのか、Mg共添加で形成される空孔凝集体は本当に存在するのか、を新たな問いとして見出しており、そのためには原子レベルでの結晶格子像の観測が必要不可欠である。現在は、走査透過電子顕微鏡での直接観察によって空孔凝集体の存在を解き明かそうと計画している。さらに、GAGG:Ceを始めとする蛍光体について広くガンマ線誘起陽電子消滅寿命分光を適用しその空孔型欠陥の存在と起源を調べており、本研究の波及効果が当初の計画を越えて進行するに至っている。そのため、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新たな手法である、ガンマ線誘起陽電子消滅寿命運動量相関、ガンマ線誘起陽電子消滅寿命ポンププローブ分光、の開発にも着手し、次回の科学研究補助金の申請を利用して、微量空孔型欠陥の新たな欠陥評価方法の提案を行う。また、他の手法と連携した新たな局所構造解析手法の確立を目指したい。
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