研究課題
熱と電気を相互変換できる熱電材料は冷却素子や発電装置としての応用が進んでおり、普及には高性能化が必要である。だが熱電特性は相互に絡みあう多数のパラメータに支配されており、母物質依存性と試料依存性が分離されずに研究されてきたため、本質的な特性改善指針を見出すことが困難であった。そこで本研究では、Materials informatic (MI)を用いて、母物質の選定から不純物元素とそのドープ量の選択、合成条件の最適化までを効率化することで、新規熱電材料探索をハイスループットに行う方法論を確立する。このために、本研究者がこれまで開発してきた実験的熱電特性のデータベースStarrydataと、新規開発するUnfolded電子構造データベースと実験記録データベースを使用する。今年度は、独自開発したStarrydata2 webシステムを用いて、過去に出版された論文から熱電特性の温度依存性の実験データの大規模収集に取り組んだ。その結果、6000本以上の論文から集めた25000試料以上の熱電特性データを含む、世界最大規模の実験値のデータセットを得ることができた。このデータを機械学習することにより、既知熱電材料の熱電特性を最適化する組成を予測することに成功した。これにより、ドーピング効果などの複雑な化学組成変化の効果を予測することに成功した。さらに、高いZTを示す可能性のある半導体の候補をリストアップすることができた。この中には熱電特性が未報告の化合物も多く含まれており、新規熱電材料の候補として期待できる。
2: おおむね順調に進展している
論文からの実験データの収集作業が順調に進展し、世界最大規模の熱電特性の実験データのデータベースを構築することができた。また、このデータを用いて機械学習を試行して、有望な材料を絞り込むための技術も確立できた。Unfoldingデータベースについても、計算プログラムの詳細な設計が完了できた。
次年度も熱電材料のデータ収集に引き続き取り組み、熱電特性データベースのさらなる大規模化に取り組む。今年度に設計が完了したUnfoldingの計算コードの、コーディングに取り組む。このコードを単純な2元系化合物400種類の電子構造に適用することにより、拡張ブリルアンゾーンの中でのバンド構造を計算する。並行して、このバンド構造を3次元的に視覚化するためのWebプログラムを開発する。これらを用いて、世界で初めて拡張ブリルアンゾーン中でバンド構造を比較できるWebシステムを開発する。
2020年3月に参加を予定していた学会や研究打ち合わせが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために中止・延期になったために次年度使用学が生じた。余剰分は論文からのデータ収集の外注量を予定よりも多くして、データベースの充実を図ることで利用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (3件)
Science and Technology of Advanced Materials
巻: 20 ページ: 511~520
10.1080/14686996.2019.1603885
https://www.starrydata2.org
https://starrydata.wordpress.com
https://starrydataproject.wordpress.com