研究課題/領域番号 |
19K05000
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮嶋 尚哉 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20345698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水熱処理 / セルロース / ポーラスカーボン / 構造制御 |
研究実績の概要 |
本研究は,ポーラスカーボンのバルク形態とナノ空間の両モルフォロジーを,同時かつ高度に制御可能な技術の確立とその新たな用途拡大を図ることを目的として,初年度は,出発原料にセルロースカルボン酸塩を用いて,水熱処理・炭素化の改質処理条件の最適化と,原料セルロースの官能基置換度(DS値)及び平均分子量が合成カーボンのモルフォロジーに及ぼす影響について検討した。 その結果,概ね,200度,24時間程度の水熱処理で,比較的,球形の整った水熱チャー(水熱処理で生成する黒色の固体残留物)が得られ,これを引き続き,窒素雰囲気下で900度で炭素化することで球状ポーラスカーボンに転換できた。原料セルロースのDS値に着目してチャーおよびカーボンの諸物性への影響を整理すると,DS値の増加に伴い,(1)水熱チャー収率が大幅に減少し,その粒径サイズおよび表面ラフネスが大きくなる,(2)チャー中のNa含有率は僅かに大きくなるもののほとんど残存しない,(3)カーボンのミクロ孔性が大きくなり,細孔発達が顕著となる,といったことが判明した。総合的に,置換度が中程度の原料を用いた時に,最も均質な球状ポーラスカーボンを得るに至った。DS値が大きくなるほど熱挙動が大きく変化したことから,多孔性を発現しやすい水熱チャーに改質されていたことが示唆された。一方,原料の平均分子量は,水熱チャーや炭素体の形態・細孔特性に与える影響はDS値のそれに比べて小さく,ほぼ無いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,Naイオンを含むセルロース誘導体を用いて,主に細孔制御に関する有効なデータを得ることができた。特に原料のDS値が水熱チャーの改質に大きく影響を及ぼしていることが示唆されたため,さらに丁寧に原料の絞り込みを行う必要が生じた。また,研究当初はアルカリイオン種が賦活反応に直接寄与すると予想していたが,そのような効果をもたらすだけのアルカリ灰分がチャー中には残存していなかったことから,次年度以降は,細孔の形成メカニズムについても詳しく調査する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,本手法による細孔/バルク形態の高精密化の検討と,各種水熱・炭素化反応のメカニズムの解明について総合的に評価を行い,本手法によるポーラスカーボンの構造制御の多様性について追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)国際学会の事前登録とその諸経費を見込んでいたが,開催がキャンセルとなったことから繰越分が生じた。 (使用計画)次年度の本人および研究協力者2名(所属学生)の国内外の学会参加費ならびに旅費に追加計上する予定である。学会行動が制限された場合は,研究遂行に不可欠な高純度ガスや試薬の購入費に充てる予定である。
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