研究課題/領域番号 |
19K05001
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安坂 幸師 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (50361316)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 電界放出 / 発光 / その場透過電子顕微鏡法 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)は、先端が先鋭で、直径がナノメートルサイズと小さく、アスペクト比が大きいことに加え、電気伝導や、機械的強度、電流密度耐性、熱伝導性、化学的表面安定性、高温耐熱性に優れていることから、低電圧で電子を電界放出する電子エミッタの材料として注目されている。本研究では、最近見出された電界放出中に発現するCNTからの発光を利用した、CNT電子エミッタの光・電子素子への応用開拓に向け、この発光の特性解明を目指す。CNTの特性はその特徴的な構造に応じて変化することが知られており、特性解明にはCNT集合体の統計的評価だけでなく、CNT1本1本の構造と対応させて評価・解析することが求められる。そこで本研究では、透過電子顕微鏡の中で、CNT1本1本のナノ構造の動的な変化をリアルタイムに観察しながら、その場で電圧や放出電流、発光スペクトルの変化を同時に測定できるその場透過電子顕微鏡法により、CNTの構造変化や電界放出および発光の基礎特性を評価し、構造と電界放出および発光との関係を解析して電界放出中の発光発現機構を究明する。本年度、誘電詠動法によるCNT電子エミッタの作製条件や、電界放出条件を検討した。また、その場透過電子顕微鏡の実験環境を整備し、比較実験として、多層CNTへの通電による発光について、CNTの構造と発光との関係を解明するための評価・解析を実施した。その結果、CNTの外層からだけでなく、内層からも黒体放射とは異なる機構により光が放出されている可能性を示唆する新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度(令和元年度)の研究計画に沿って、カーボンナノチューブ(CNT)電子エミッタの作製条件や電界放出条件を検討し、また透過電子顕微鏡内その場観察法による測定技術の構築、および実験環境の整備を実施した。さらに、多層CNTへの通電による発光について解析を実施し、新たな知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、基本的に本研究計画に沿って実施する。透過電子顕微鏡内その場観察測定法による、カーボンナノチューブ(CNT)電子エミッタの構造、特に、CNTの先端形状や、長さ、直径、層数などの原子レベルの構造と、電界放出特性、発光特性の評価を順次遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた装置の本顕微システムへの導入にあたり、仕様および費用について再検討する必要が生じ、次年度使用額が生じた。繰越金については、本年度の助成金と合わせ、本顕微システムの改良および装置に使用する。
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