研究課題/領域番号 |
19K05004
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
植田 和茂 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70302982)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発光 / 蛍光体 / ペロブスカイト構造 / 酸化物 |
研究実績の概要 |
ペロブスカイト型酸化物蛍光体ABO3において、発光中心として添加した希土類イオンは、一般的にAサイトを置換するが、一部の物質ではBサイトを置換し、Aサイトを置換した場合と異なる発光特性を示すことが最近明らかになった。以前の数多くの研究はAサイトを置換した場合の蛍光特性を報告しており、単純なペロブスカイト構造でBサイトを置換した希土類イオンからの発光特性について報告した研究はほとんど無い。したがって、本研究では、最近見出したA・B各サイトに発光中心を選択添加できる単純ペロブスカイト型酸化物蛍光体を用い、各サイトからの発光特性を正確に分離しながら整理・理解する。そして、各サイト間でのエネルギー移動を利用した新規蛍光体や、結晶場の強いBサイト中の希土類イオンからの発光を用いた新規蛍光体を開発することを目的とする。昨年度は、新しい分光光度計の導入と、サンプルの合成に取り組んだ。その結果、単純ペロブスカイト型酸化物LaLuO3でTb3+をA,B各サイトに選択添加できることを発展させ、Ce3+をAサイトに共添加し、Ce3+がAサイトを占有(Ce3+(A))し、且つTb3+がAまたはBサイトを占有(Tb3+(A),Tb3+(B))するサンプルを作製できたことをリートベルト解析などから確認した。今年度は、それらのサンプルに対して、Ce3+(A)からTb3+(A)とCe3+(A)からTb3+(B)へのエネルギー移動を調査した。いずれの場合でも、エネルギー移動が起こることが明らかになり、また幅広い波長領域で、Tb3+を励起できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度で新しい蛍光分光光度計の測定環境が整い、また希土類イオンをサイト別添加した代表的なサンプルの作製を格子定数変化などから確認でき、今年度はそれらのサンプルの蛍光特性およびエネルギー移動を評価した。特に、LaLuO3:Ce3+(A)-Tb3+(A)とLaLuO3:Ce3+(A)-Tb3+(B)の蛍光評価では、Ce3+(A)の励起に対して、いずれのサンプルでもTb3+固有の緑色発光が観察された。各サンプルのTb3+の発光スペクトル形状から、結晶場分裂の大小関係を判断し、意図通り大部分のTb3+は、A,B各サイトにサイト別添加できていることが明らかになった。Ce3+(A)励起によるTb3+の発光は、一般的な同一サイト間のCe3+(A)からTb3+(A)へのエネルギー移動だけではなく、異なるサイト間のCe3+(A)からTb3+(A)へのエネルギー移動も起こっていることを示唆している。エネルギー移動効率は同一サイト間の方が高いようであるが、著しく異なっていることはなかった。このように、目的としているサンプルの作製および蛍光・エネルギー移動の評価を特に問題なく進めていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在はペロブスカイト型酸化物蛍光体ABO3の中でも、希土類イオンの価数の影響を受けにくい3価のイオンがA及びBサイトを構成する物質、いわゆるⅢ-Ⅲ系のペロブスカイト型酸化物を中心に物質探索を行っている。具体的にはLaLuO3中のCe3+(A)からTb3+(A)とCe3+(A)からTb3+(B)へのエネルギー移動・発光を確認できた。また、各サイト間のエネルギー移動が普遍的に起こることを確認するため、別の希土類イオンの発光例として、今後LaLuO3中のPr3+(A)からGd3+(A)とPr3+(A)からGd3+(B)へのエネルギー移動・発光を確認する予定である。また、同じ母体でTb3+(A)-Tb3+(B)間やEu3+(A)-Eu3+(B)間のエネルギー移動を調査し、本研究課題では、Ⅲ-Ⅲ系のペロブスカイト型酸化物を中心に調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額な残金のため、次年度の消耗品費として活用するため。
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