研究課題/領域番号 |
19K05007
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
友野 和哲 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (40516449)
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研究分担者 |
隅本 倫徳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40414007)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 層状化合物 / 層間金属錯体 / 光電流 / キャパシタ材料 / 挿入脱離機構の解明 |
研究実績の概要 |
可逆な酸化還元により駆動するレドックスキャパシタ材料である層状MnO2の層間に酸化還元活性な金属錯体を挿入することで,比容量が増加(3-5倍)することを初めて見出した。さらに,光電流(2-9倍)も波長依存性を示した。本研究課題の目的は,金属錯体(Co,Fe,Ru系)/層状MnO2薄膜を作製し,①竹炭との複合化により大容量化と光電変換の高効率化の達成,②比容量等の電気化学性能を左右するイオンの挿入・脱離機構を明らかにすることである。 2019年度では,伝導補助剤である竹炭基板作製の最適化と含Co錯体/層状MnO2薄膜の作製と電気化学特性に関する研究を進めた。竹炭基板の製造方法を見出した。また,最適条件での薄膜のキャパシタンスは850F/g(目標;500F/g)に達した。50サイクルまでの容量の低下は7%であった。Co系金属錯体を層間にもつ高容量と高安定性を示す層状Mn酸化物薄膜の作製条件を明らかにした。 2020年度では,Co錯体の脱離抑制および光応答性に関する検討を進めた。Co錯体を層間にもつMnO2層を作用極として,脂質層を層間にもつMnO2層を電着させることで,Co錯体の脱離の抑制が可能であることがわかってきた。また,Co層の電着量に比例し比容量が変化することから,層間のCo層が比容量に影響していることが強く示唆された。光照射を行うことで,600-700F/gのMnO2膜が得られることがわかった。さらに,波長に依存して比容量が変化することも確認できた。一方で,光照射を行うことで水の電気分解が生じ,基板から薄膜が剥離するという課題がでてきた。この課題については,波長および膜厚の変更で対応する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
竹炭製造法を確立できた。850F/gの高容量と50サイクルまでの容量低下が7%以内のCo錯体を層間イオンとする層状Mn酸化物の薄膜の最適条件を見出した。また,比容量の低下に関係していると考えられる層間からの金属錯体の脱離は,脂質イオンを層間にもつMnO2層を電着することで抑制できる可能性がわかった。光照射により,層間に酸化還元活性でないMnO2に比べて2-3倍大きい600-700F/gの薄膜を作製できるようになった。また,50サイクルまでの比容量低下は大きくても15%程度であり,サイクル安定性も高い膜の条件が分かってきた。一方,遅れていると判断した理由は,光照射による比容量の向上や電解質イオンのインターカレーション現象などの理解が進んでいないためである。実験データとしては満足できる数値を得られているが,その原理の理解が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
1年目において,竹炭製造法が確立し,Co系金属錯体を層間イオンとする薄膜において高容量化と高安定性に関する知見を得られた。2020年では,層間からの金属錯体の脱離抑制に指針が得られ始めた。また,光照射による比容量の向上も確認した。2021年度では,金属錯体の追加による性能比較および光電気化学の諸条件の理解を進める。また,さらにイオンの挿入脱離機構を理解するため,系統的な条件変更により傾向を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響で,3月の日本化学会年会や化学工学会学生発表会も当初は対面実施であったが遠隔開催となった。2021年度の対面学会参加の旅費として使用するため次年度に予算をくりこした。
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備考 |
友野研究室ホームページ (https://tomonolab.com/)
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