研究実績の概要 |
シリケート化合物ABSi2O7(A=K, Rb, etc, B=Nb, Ta)はNbO6八面体に由来する変位型強誘電体である。基本構造にNbO6八 面体とSiO4四面体があり、これらが頂点共有ネットワークを形成することにより大きな空隙を持つことを特徴とする。 結晶構造から予想されるKNbSi2O7の電気物性として、格子を形成する多面体ネットワークがワイドバンドギャップを担い、大きな空隙のあいだに配置されるK+カチオンは高い移動自由度をもつことが考えられる。本研究では、量子 ビームによるABSi2O7の強誘電性及びイオン導電性発現機構を解明し、高機能性強誘電体の創製に展開することを目的とする。 2020年度は、本課題の対象物質であるABSi2O7のイオン電導性の向上を目指し、Liをドープした結晶の合成を進めた。 使用したLiCO3はK+に対して融点が低く、KNbSi2O7と比してLi+の欠損が大きくなるため、X線回折の結果より従来の作成方法では未反応の母物質であるSiO2が残存することが判明した。本年度はKNbSi2O7にLiをドープした試料を作成し、イオン電導性の発現について検討を進める予定である。 開発を進めている新規アルゴリズムについて、より高精度な結晶構造因子を得るためのプログラムの作成を進めた。具体的には結晶構造解析における吸収補正に着目し、方向余弦を加味した計算を付加する補正プログラムを作成した。また、溶融結晶中に単結晶が成長する可能性があり、これらの測定、解析のための補助的なプログラムについて新たに作成を行なった。今後、複数のイオン導電性試料に対して適用し、検討を進める予定である。
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