二酸化バナジウム(VO2)は、65℃近辺を境に金属ー半導体転移を起こす。低温で半導体、高温で金属の特性隣、物理的な特性(光、電気、結晶構造など)が大きく変化する。この変化を利用して、これまで調光窓への応用、電気メモリーへの応用などが提案され、多くの研究がされてきた。ただ大きな問題点が2つあり、それは転移温度が高すぎること、揮発性であることである。例えば調光窓に応用した場合、高温で金属になるため、太陽光を遮る効果はあるが、65℃にならないと光を遮ることができない。電気メモリーに応用した場合、高温で記録した記録は低温で消去してしまう。これらの問題を解決するため、VO2への元素添加が試みられるが、我々はVO2への応力印加でこの課題の解決を試みた。その方法として相変化材料の結晶転移に伴う体積変化を利用し、VO2に応力を加え、VO2の結晶転移温度制御を試みた。相変化材料は、光ディスクの記録材料として実用化されており、結晶とアモルファスの光学特性の違いを利用して、光記録を行っている。相変化材料は、アモルファスから結晶に転移する場合、体積として7%程度の体積収縮を伴う。この体積収縮によって、VO2に応力印加し、VO2の結晶転移温度を制御しようとする試みである。本研究では、相変化材料とVO2の複合材料に対し、光学的、電気的な測定でVO2の転移温度が変化することを確認した。相変化材料をアモルファスから結晶に相転移させた場合、VO2の結晶転移温度が数℃低下することが明らかとなった。またそれが応力の効果であることをX線回折法などで確認を行なった。以上の結果は、今後の応用に向け、大きな研究成果を得たと言える。
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