研究課題/領域番号 |
19K05026
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三浦 誠司 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50199949)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | その場観察 / 硬さ / 破壊 / 組織制御 |
研究実績の概要 |
本研究では、脆性相-延性相からなる多相合金の破壊挙動理解を目指している。ここで重要なのは亀裂進展の情報取得であるが、現状は多大な労力が必要であり、精度は高いものの統計的な処理などを可能にするほどの多数の情報を得ることは容易であるとは言えない。 破壊の情報は応力変動と共に、亀裂の時間発展の情報を必要とする。ハイスループットな情報取得法として圧子押し込みによる破壊試験がこれまで提案・採用されてきているが、一定荷重負荷後の状況という情報しか得られない。 亀裂の時間発展を簡便に取得するためにはその場観察(in-situ)が必須である。本研究では、透明圧子を採用して押し込み時の試料の変形・亀裂進展を「その場観察」する装置(顕微インデンタ)を用いて、時間経過に伴う変形・亀裂進展挙動を詳細に追跡することを提案した。 亀裂観察のために稜部分を研削し観察窓とした改良型ビッカース圧子を作製し、動画と荷重-変位曲線から亀裂進展と荷重の関係を抽出し、表面組織観察結果と組み合わせて、破壊挙動の情報化を進めているが、当初採用したサファイアは脆性なSi単結晶に対して十分な強度を有していないことが明らかとなった。そこで圧子を透明人造ダイヤモンドに置き換えることで、十分な耐久性が得られることを明らかにした。その結果、除荷時にSi単結晶が大きく破壊するという事象が観察されたが、有限要素計算結果と良い一致を示している可能性がある。なお、この結果に対し、日本金属学会優秀写真賞を受賞した。 ダイヤモンド圧子をさらに有効に活用するため、今後は圧子形状のさらなる検討と、画像処理手法の検討の二つを推し進める。また、複相組織の機械的性質を明らかにするため、破壊の時間発展を詳細に観察・解析する。観察手法の高度化のために、制御手法の高度化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は、特殊形状の顕微インデンタ装置開発を行うとともに、組織制御の基礎的実験を遂行することであった。そのため透明サファイア圧子の加工を行ったが、単結晶Siなどの硬質脆性材料ではサファイア圧子であっても先端部破壊を免れないことが実験的に判明したことから、人造ダイヤモンドで特注圧子を作製することとした。その結果、良好な試験実施が可能となったが、負荷時ではなく除荷時に大きく破壊するという、一般的な常識とはかけ離れた事象が観察された。これら現象は有限要素計算によって既に報告されている結果と良い一致を示している可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンド圧子が有効であることが確認できたものの、ダイヤモンドと同等の屈折率をもつ屈折率調整液は存在しないことから、二つの領域が重なって観察される部分がわずかに残るという問題が未解決である。その最小化のために、圧子形状のさらなる検討と、画像処理手法の検討の二つを推し進める。 複相組織の機械的性質を明らかにするため、破壊の時間発展を詳細に観察・解析する。観察手法の高度化のために、制御手法の高度化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスによる日本金属学会春期大会中止などに伴い、旅費などの返金が生じた。 次年度における特注ダイヤモンド圧子など物品購入に用いる。
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