本研究では、脆性相-延性相からなる多相合金の破壊挙動理解のために、亀裂進展の簡便な情報取得を目指した。ハイスループットな情報取得法として圧子押し込みによる破壊試験がこれまで提案・採用されてきたが、一定荷重負荷の後に除荷した状態での状況という情報しか得られない。亀裂の時間発展を簡便に取得するためにはその場観察(in-situ)が必須であることから、本研究では、透明圧子を採用して押し込み時の試料の変形・亀裂進展を「その場観察」する装置(顕微インデンタ)を用いて、時間経過に伴う変形・亀裂進展挙動を詳細に追跡することを提案した。 まず、亀裂観察のために稜部分を研削し観察窓とした改良型ビッカース圧子を作製し、動画と荷重-変位曲線から亀裂進展と荷重の関係を抽出し、表面組織観察結果と組み合わせて、破壊挙動の情報化を進めることとした。半球状のブリネル圧子では有効であったサファイアはビッカース圧子では先端部の耐久性が不十分であったことから、これを透明人造ダイヤモンドに置き換え、十分な耐久性が得られることを確認した。その結果、負荷時ではなく除荷時にSi単結晶が大きく破壊するという事象が観察された。これは不透明材料の観察結果としては知りうる限り初めての観察結果であり、日本金属学会 微小領域の力学特性評価とマルチスケールモデリング研究会にて優秀ポスター賞を受賞した。 圧子形状のさらなる検討と、画像と荷重データの同期手法の検討の二つを推し進めた。さらに高品質な画像の取得を目指して、光学経路を工夫し解決を図った、また、破壊の時間発展を詳細に観察・解析する観察手法の高度化のために、荷重-変位曲線と動画を同一画面上で確認しながら制御できるシステムを開発した。これらにより、観察データ取得が容易になると共に、き裂進展などのイベント発生と荷重の変化のタイミングをより正確に、かつ短時間でデータ整理できるようになった。
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