本研究は,異材重ね接合継手の接合部性状や試験片寸法と継手強度の関係について,破壊に至るまでの変形挙動と関連づけて理解を深め,引張強度の試験片依存性を評価できる手法の構築を目指すものである。R1年度の取り組みでは,軟鋼から780 MPa級鋼までの強度の異なる薄鋼板を用いてレーザ溶接により重ね貫通継手を作製し,引張せん断試験を実施した。重ねた鋼板の強度の組合せや,重ね板の厚さの組合せを変化させた試験片を加工し,これらが引張せん断強度に及ぼす影響を調べた。実験中に重ね継手試験片の破壊までの変形挙動をビデオ撮影し,それをデジタル画像相関法で解析することで,試験中のせん断変形や回転の様子を分析して強度との関係を検討した。また,同試験のFEM解析を3次元弾塑性モデルを用いて実施し,実験と整合する結果であることを確認した上で,継手強度への変形挙動の影響を考察した。その結果,継手強度は一般に低強度な板で破壊するためその強度に依存するはずであるが,それよりも高強度な板を重ねると継手強度向上をもたらすことがわかった。これは,高強度なものを重ねたことで回転が小さくできたことに起因しており,接合部の回転角の計測結果やFEM解析の結果もそれを示唆していた。 このほか、レーザ溶接部の破壊挙動を対象に、強度ミスマッチを考慮して亀裂開口量を評価できるモデルを構築し、FEM解析で有効性を示して定式化した。また、高速に亀裂伝播する挙動を動的FEM解析で検討し、亀裂伝播速度と亀裂付近の温度上昇の関係を求めたが動的応力拡大係数とは対応しなかった。 これまで得られた成果について,R2年5月に開催予定であった国際会議での発表論文を投稿し,掲載可となった。ただし,COVID-19感染拡大の影響で国際会議はR3年に延期されたため,論文はその会議後に掲載される。このほか、R2年に査読付き学術論文1報が掲載された。
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