アゾベンゼンまたはスチルベン分子の集合→単結晶の形成→単結晶の積層による鱗片状微結晶の構築→鱗片状微結晶の積層による多結晶膜の形成という階層構造は、単色構造色として金色および銀色光沢を呈する。この金色・銀色多結晶膜をラミネート(貼り付け)加工に利用することを目的とし、多結晶膜をその金色・銀色光沢が失われない程度まで粉砕、次いでポリマーに分散後、バーコーティングによるシート化について検討した。 金色または銀色光沢多結晶膜を形成する化合物を良溶媒(主にアセトン)に溶解させたのち、貧溶媒(水)を加えて、当該化合物を微結晶として析出させ、その後、吸引ろ過により、微結晶をろ紙上に回収した。ろ紙上に残った当該化合物の多結晶膜は、金色または銀色光沢を呈した。これらの多結晶膜を、金属光沢が損なわれない程度まで粉砕し、粘稠な高分子に分散させ(微結晶分散ペーストの調製)、バーコーティング法により、金色または銀色シートを作製した。 例えば、金色光沢多結晶膜を粉砕し、ポリビニルアルコール (PVA)/ホウ酸混合系またはアルギン酸ナトリウム (NaAlg)/塩化カルシウム混合系に分散後(金色光沢ペーストの調製)、バーコーティング法により、金色光沢シート(厚さ~1 mm)を作製することにに成功した。 今後は、自由曲面を有する基材に金色・銀色光沢を加飾するため、この厚さ~1 mmのシートをさらに圧延し、金色または銀色光沢フィルムの作製を試みる。 以上のことから、金属を使わない、金属フリーな、金色・銀色光沢フィルムの作製に関する基盤技術を確立することができた。
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