研究課題/領域番号 |
19K05039
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 和弘 金沢工業大学, 工学研究科, 教授 (50356606)
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研究分担者 |
和田 倫明 金沢工業大学, 革新複合材料研究開発センター, 研究員 (30839593) [辞退]
金原 勲 金沢工業大学, 産学連携室, 教授 (50011101)
瀬戸 雅宏 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (90367459)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高性能プラズマ / 直接接合 / 接合メカニズム / 官能基 / XPS / CFRP / せん断応力 / プラズマアシスト・インサート射出成形法 |
研究実績の概要 |
軽くて強い特長を持つCFRTPを金属の代替材料として使うためには、接合技術の開発が喫緊の課題である。我々は新奇高性能プラズマを用いて、CFRTPの接合を融点未満の温度で行い、36MPaという極めて強い接合強度を実現し、ボルト、接着剤、熱融着等の接合法における問題点を解決した。本研究では、プラズマによる直接接合のメカニズムを調べ、最終的に直接接合に係わる要因を明らかにして、実用化に向け、より長くプラズマ照射効果を持続させて接合する。またプラズマ接合の新展開として、樹脂部品のインサート射出成形を用いた樹脂接合において、これまで十分な接合強さが期待できない樹脂同士の接合について,プラズマ処理による表面改質を行い、接合強さの向上を図る。 2019年度は、プラズマ照射効果の経時変化について、水の接触角、及び、せん断応力、さらにX線光電子分光(XPS)のスペクトルがどの様に変化するかを調べた。測定対象は、幅広い応用が期待されているCF/PA6、CF/PEEKである。実験は、初めにプラズマ照射した多数の試料を、数日経過する度に取出し、水の接触角測定、XPS測定を行い、せん断応力の場合は、時間経過した試料を接合後、引張試験を行った。それに加えて、プラズマの照射効果を長時間持続させる照射条件の最適化を行った。 また、インサート射出成形法による樹脂接合について、成形用の金型入れ子設計および樹脂部品をインサートした射出成形の接合を行った。材料はポリプロピレン(PP)およびポリアミド(PA)を用い、同一樹脂による接合を行い、接合強さを評価した。PPの接合では8MPa、PAでは16MPa程度の接合強さであった。一方、PPおよびPAを母材とした熱可塑性CFRTPにおいて、プレスによる圧縮接合実験を新たに行った。その結果,接合強さは5MPa程度に止まり、プラズマによる表面改質の必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマ照射効果の経時変化についてのせん断応力、水の接触角の測定において、プラズマ照射条件をCF/PA6では3kV、回転速度1.7rpm、1回転、CF/PEEKでは3kV、回転速度1.7rpm、照射回数3回転にそれぞれ最適化した試料では、プラズマ照射効果が2か月以上保持されることが分かった(現在記録更新中)。これらの最適化した照射条件の試料では、直接接合に係わるヒドロキシ基、カルボキシ基に由来する官能基が減少することなく残っていることが、XPS測定のスペクトルで確認され、官能基の長寿命化に成功した。プラズマにはラジカルやイオンの他にも電子を含んでおり、最適条件下ではその電子により樹脂表層を架橋することで、生成した官能基の潜り込みを防いだためと考えられる。 プラズマを用いた樹脂部品インサート射出成形法による樹脂-樹脂接合については、今期はその前段階として、プラズマ処理による表面改質を行わず、射出された樹脂の熱量で接合面を再溶融させ溶着させる手法に着目し、樹脂接合の実力値を把握することとした。また、インサート材の接合面に種々の凹凸形状を加工し、射出樹脂との融着促進の可能性について検討した。その結果最も汎用的に使用されているポリプロピレン(PP)樹脂や異種材同士の接合においては、接合面の溶融は確認されたものの十分な接合強さが得られなかった。しかし、表面形状によって界面溶融が促進される状況も確認され、次年度以降のプラズマ処理による表面改質、並びに界面溶融とアンカー効果による実験の必要性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)プラズマ効果の経時変化について、生成した官能基の長寿命化のメカニズムを検証する。 (2)直接接合のせん断強度を上げつつ、接合時間の短縮も可能になる様に、製造効率も考慮した各種パラメータ(プラズマ照射時の電圧、照射回数、ガス圧、ガス種)の最適化を行う。とくに、マトリックス樹脂の異なるCFRPの接合発現温度に着目して、接合メカニズムを明らかにする。 (3)新たに導入した平行平板型プラズマ照射装置を用いて、CFRP、樹脂板、金属等の同種、あるいは異種材料の直接接合を行うため、プラズマ照射条件の最適化を行う。これまでのドラム型プラズマ照射機では、フィルムや小さな板 (100 x 25 x 2mm) しか処理できなかったが、この平板型プラズマ装置の導入により、A3サイズ (厚さ20mm) のワークに対してプラズマ照射が可能になった。平板型とドラム型において、プラズマ照射に係わるパラメータの互換性を調べる。 (4)インサート射出成形による接合については、インサート材接合部にプラズマ処理による表面改質を行い、接合強さの評価を行う。具体的な検討事項はプラズマ処理条件および射出成形条件の影響を明らかにし、接合強さ向上のメカニズムを検討する。さらに、インサート材にCFRP積層材を用いた検討も実施し、本接合手法の適用範囲についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、消耗品として炭素繊維強化樹脂(CFRP)の在庫があったため、新規に購入せずに実験を遂行できた。次年度は、現在の消耗品の在庫が無くなることに加え、これまでのドラム型のプラズマ装置の他に、新たに平行平板型のプラズマ装置を動かすため、多量のCFRPなどの消耗品の購入が必要となる。
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備考 |
株式新聞、モーニングスター、トレーダーズ・ウエッブ 9/5; 建設工業新聞 9/6;日本経済新聞 9/6;北陸中日新聞 9/7;橋梁新聞 9/11;溶接ニュース 9/17;日刊工業新聞 9/20;フジサンケイビジネスアイ 9/26;セメント新聞 9/30;JEC_group(世界最大級の複合材料非営利団体)Japan Edit 9/27;中国新材料 9/27;中国化工信息網 9/30
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