研究課題
LaNiO3は、空気雰囲気中で、酸素イオン導電性が乏しいにもかかわらず、GDC電解質と組合わせる事で、比較的高い界面導電率を示す空気極材であることが報告されている。従って、三相界面反応における反応性が高く、電極反応の頻度を考慮すると、ナノコンポジット化することにより、高い電極活性が期待できる。そこで、本研究では、LaNiO3とGDCをグリシンナイトライド法で合成し、数百nmの粒子径をもつナノ粒子を用いて、コンポジット空気極の電極構造の最適化を検討した。その結果、LaNiO3とGDCを体積比で1:1になるように混合し、スラリー化してGDCの緻密電解質に塗布し、1173K、1時間で電極焼付を行うことで、界面導電率は773Kで0.5Scm-2と非常に高い界面導電率を示した。これは、従来材料のLSCFと比較して、773Kでは18倍以上の電極性能であった。また、界面導電率の活性化エネルギーは1.3eVと低く、低温作動形SOFCにLaNiO3-GDCコンポジット空気極は適している事がわかった。LaNiO3-GDCコンポジット空気極の電極作製条件の最適化を図る過程で、1273K以上のより高い電極焼付温度は、LaNiO3が分解し、LaがGDC中に拡散し、NiOが析出した。一方、1073Kでの電極焼付温度では、十分にGDCのネッキング・焼結が進まないことが分かった。その結果、1273K以上および、1073K以下のいずれの条件でも、界面導電率は大幅に低下した。また、GDC電解質基板上でLaNiO3単独を1273Kで焼付けて、電気化学特性を評価したところ、LaNiO3の一部が分解しても、LaのGDC中への拡散は抑制され、界面導電率の低下も抑制されている事が分かった。
2: おおむね順調に進展している
LaNiO3とGDCの液相法により作製したナノ粒子によるコンポジット空気極の適した空気極熱処理条件を見出し、熱処理がおよぼすLaNiO3および、GDCナノ粒子、GDC基板の間に生じている固相間の反応機構も理解することが出来た。また、1173K、1時間で焼付けたLaNiO3-GDCコンポジット空気極は、非常に高い電極性能を有することが確認されたとともに、LaNiO3の一部が分解しても、LaのGDC中への拡散が抑制されていれば、高性能が維持できることが分かった。これにより、さらなる電極構造の最適化への指針を得ることが出来た。これらの成果は、国際学会3件、国内学会および、シンポジウム2件、査読付き論文3件で発表された。
高温で緻密焼結化されたGDC電解質上では、LaNiO3のLaのGDC拡散が抑制されたことが分かった。このことから、予めGDC電解質の表面に多孔質でありながら、焼結性を上げた層を形成することにより、LaのGDCへの拡散を抑制しながら、反応場である三相界面長を増やすことで、界面導電率を向上させる事が見込まれる。一方で、通常のコンポジット電極の構造の方が、Laの拡散は起こりやすいが、三相界面長は長い利点を持っている。従って、両者を組み合わせて、界面導電率を向上させる方法を検討する。さらに近年、燃料が薄まらない利点から、電解質にプロトン導電性セラミクスを用いる研究が広く期待されている一方、安定性が高く、高性能な空気極は未だ見出されていない。LaNiO3-プロトン導電体コンポジット空気極の検討は、3年目に計画していたが、状況によっては、前倒しで検討を進める。
計画時よりも、比較的良好な結果が得られたため、試薬などの消耗品の使用量が、予想よりも少なかった。今後の研究の推進方策で述べた通り、プロトン導電性セラミクスの研究を前倒しする可能性があるので、使用額の差額は、プロトン導電性セラミクス合成用試薬に当てる。
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