• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

LaNiO3系酸化物を用いた高性能ナノコンポジット空気極の創製

研究課題

研究課題/領域番号 19K05040
研究機関中部大学

研究代表者

橋本 真一  中部大学, 工学部, 教授 (60598473)

研究分担者 波岡 知昭  中部大学, 工学部, 准教授 (90376955)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードSOFC用空気極 / コンポジット電極 / 異常原子価 / 低温作動SOFC / 界面導電率
研究実績の概要

LaNiO3は、空気雰囲気中で、酸素イオン導電性が乏しいにもかかわらず、GDC電解質と組合わせる事で、比較的高い界面導電率を示す空気極材であることが報告されている。従って、三相界面反応における反応性が高く、電極反応の頻度を考慮すると、ナノコンポジット化することにより、高い電極活性が期待できる。そこで、本研究では、LaNiO3とGDCをグリシンナイトライド法で合成し、数百nmの粒子径をもつナノ粒子を用いて、コンポジット空気極の電極構造の最適化を検討した。その結果、LaNiO3とGDCを体積比で1:1になるように混合し、スラリー化してGDCの緻密電解質に塗布し、1173K、1時間で電極焼付を行うことで、界面導電率は773Kで0.5Scm-2と非常に高い界面導電率を示した。これは、従来材料のLSCFと比較して、773Kでは18倍以上の電極性能であった。また、界面導電率の活性化エネルギーは1.3eVと低く、低温作動形SOFCにLaNiO3-GDCコンポジット空気極は適している事がわかった。
LaNiO3-GDCコンポジット空気極の電極作製条件の最適化を図る過程で、1273K以上のより高い電極焼付温度は、LaNiO3が分解し、LaがGDC中に拡散し、NiOが析出した。一方、1073Kでの電極焼付温度では、十分にGDCのネッキング・焼結が進まないことが分かった。その結果、1273K以上および、1073K以下のいずれの条件でも、界面導電率は大幅に低下した。また、GDC電解質基板上でLaNiO3単独を1273Kで焼付けて、電気化学特性を評価したところ、LaNiO3の一部が分解しても、LaのGDC中への拡散は抑制され、界面導電率の低下も抑制されている事が分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LaNiO3とGDCの液相法により作製したナノ粒子によるコンポジット空気極の適した空気極熱処理条件を見出し、熱処理がおよぼすLaNiO3および、GDCナノ粒子、GDC基板の間に生じている固相間の反応機構も理解することが出来た。また、1173K、1時間で焼付けたLaNiO3-GDCコンポジット空気極は、非常に高い電極性能を有することが確認されたとともに、LaNiO3の一部が分解しても、LaのGDC中への拡散が抑制されていれば、高性能が維持できることが分かった。これにより、さらなる電極構造の最適化への指針を得ることが出来た。
これらの成果は、国際学会3件、国内学会および、シンポジウム2件、査読付き論文3件で発表された。

今後の研究の推進方策

高温で緻密焼結化されたGDC電解質上では、LaNiO3のLaのGDC拡散が抑制されたことが分かった。このことから、予めGDC電解質の表面に多孔質でありながら、焼結性を上げた層を形成することにより、LaのGDCへの拡散を抑制しながら、反応場である三相界面長を増やすことで、界面導電率を向上させる事が見込まれる。一方で、通常のコンポジット電極の構造の方が、Laの拡散は起こりやすいが、三相界面長は長い利点を持っている。従って、両者を組み合わせて、界面導電率を向上させる方法を検討する。
さらに近年、燃料が薄まらない利点から、電解質にプロトン導電性セラミクスを用いる研究が広く期待されている一方、安定性が高く、高性能な空気極は未だ見出されていない。LaNiO3-プロトン導電体コンポジット空気極の検討は、3年目に計画していたが、状況によっては、前倒しで検討を進める。

次年度使用額が生じた理由

計画時よりも、比較的良好な結果が得られたため、試薬などの消耗品の使用量が、予想よりも少なかった。今後の研究の推進方策で述べた通り、プロトン導電性セラミクスの研究を前倒しする可能性があるので、使用額の差額は、プロトン導電性セラミクス合成用試薬に当てる。

備考

プレスリリース配信のwebページである。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Material Development Strategy of Lightweight Solid Oxide Fuel Cells for Airplane System Electrification2019

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto Shinichi、Hirota Tomohisa、Suzuki Kenji、Namioka Tomoaki、Ito Hibiki、Miyata Ryuichi、Kobayashi Keiko、Yashiro Keiji、Takamura Hitoshi、Kawada Tatsuya、Yoshimi Kyosuke、Kijima Norito、Manabe Takaaki、Tsuchiya Tetsuo、Kojima Takayuki、Okai Keiichi
    • 雑誌名

      ECS Transactions

      巻: 91 ページ: 311~318

    • DOI

      10.1149/09101.0311ecst

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of LaNiO3-Ce0.9Gd0.1O1.95 Composite Cathode for Lowering the Operating Temperature of SOFCs2019

    • 著者名/発表者名
      Hirota Tomohisa、Namioka Tomoaki、Mori Yuto、Miyata Tomoya、Tanaka Daiki、Itoh Hibiki、Hashimoto Shinichi
    • 雑誌名

      ECS Transactions

      巻: 91 ページ: 1461~1466

    • DOI

      10.1149/09101.1461ecst

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A New Development Strategy of Light Weight Solid Oxide Fuel Cells for Electrified Airplane System2019

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto Shin-ichi、Miyata Ryuichi、Kobayashi Keiko、Yashiro Keiji、Takamura Hitoshi、Yoshimi Kyosuke、Kijima Norito、Manabe Takaaki、Tsuchiya Tetsuo、Hirota Tomohisa、Suzuki Kenji、Namioka Tomoaki、Ito Hibiki、Kojima Takayuki、Okai Keiichi
    • 雑誌名

      AIAA Propulsion and Energy 2019 Forum

      巻: 4470 ページ: 1-6

    • DOI

      10.2514/6.2019-4470

    • 査読あり
  • [学会発表] SOFC技術の電動航空機への適用、「航空機電動化へ向けたその可能性と材料開発」2020

    • 著者名/発表者名
      橋本真一
    • 学会等名
      固体酸化物エネルギー変換先端技術コンソーシアム(ASEC)公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] A New Development Strategy of Light Weight Solid Oxide Fuel Cells for Electrified Airplane System2019

    • 著者名/発表者名
      S. Hashimoto, R. Miyata, K. Kobayashi, K. Yashiro, H. Takamura, T. Kawada, K. Yoshimi, N. Kijima, T. Tsuchiya, T. Manabe, T. Hirota, K.Suzuki, T.Namioka, H.Ito, T. Kojima, K. Okai
    • 学会等名
      AIAA Propulsion and Energy Forum,2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of LaNiO3-Ce0.9Gd0.1O1.95 Composite Cathode for Lowering the Operating Temperature of SOFCs.2019

    • 著者名/発表者名
      T. Hirota, T. Namioka, Y. Mori, T. Miyata, D. Tanaka, H. Itoh, and S. Hashimoto
    • 学会等名
      Solid Oxide Fuel Cells 16,
    • 国際学会
  • [学会発表] Material Development Strategy of Lightweight Solid Oxide Fuel Cells for Airplane System Electrification2019

    • 著者名/発表者名
      S. Hashimoto, T. Hirota, K.Suzuki, T.Namioka, H.Ito,R. Miyata, K. Kobayashi, K. Yashiro, H. Takamura, T. Kawada, K. Yoshimi,N. Kijima, T. Manabe, T. Tsuchiya, T. Kojima, K. Okai
    • 学会等名
      Solid Oxide Fuel Cells 16,
    • 国際学会
  • [学会発表] 「電動航空機電源としてのSOFC への要求課題」2019

    • 著者名/発表者名
      橋本真一
    • 学会等名
      固体酸化物エネルギー変換先端技術コンソーシアム(ASEC),
    • 招待講演
  • [学会発表] 航空機電動化のためのSOFCの可能性と軽量化技術の検討(2)2019

    • 著者名/発表者名
      橋本真一、廣田智久、鈴木建司、波岡知昭、伊藤響、宮田龍一、高村仁、吉見享祐、小林恵子、八代圭司、川田達也、土屋哲男、真部高明 、木嶋倫人、岡井敬一、小島孝之
    • 学会等名
      第28回SOFC研究会
  • [備考] 中部大学、次世代燃料電池用新規空気極材料を開発(橋本真一教授ら)

    • URL

      https://www3.chubu.ac.jp/research/news/24903/

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi