研究課題
基盤研究(C)
鉄粉とグラファイト粉から成る混合粉の中に純鉄板を埋め込み,大気中で1073-1273 Kの温度域に加熱した。熱処理後の純鉄板は金属光沢が保たれ,その中にはパーライト組織が観察された。これは,グラファイト粉に起因した炭素が純鉄へ拡散したことを意味する。鉄粉が含まれない場合にはこのような現象は起こらず,純鉄の表面には酸化皮膜が形成された。なお,このような浸炭現象の発現には鉄粉の形状や炭素含有量よりも粒径の影響が最も大きいと考えられる。
材料組織制御学
鋼の浸炭は,その表面から炭素を拡散浸透させた後,焼入れ・焼戻しを行うことで表面部を硬化させる技術であり,耐摩耗性や耐疲労性の向上が求められる歯車などの機械部品によく適用される。工業的には,高炭素含有の浸炭用ガスの中で加熱・保持する「ガス浸炭」が主流となっている。我々の研究グループは,この浸炭が鉄粉とグラファイト粉を混ぜた粉末を使えば,大気中で加熱するだけで容易に達成できることを見出した。本研究課題では,新しい浸炭技術としての利用を目指して,その詳細を調査した。