研究課題/領域番号 |
19K05046
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松澤 洋子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (10358020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コーヒーリング効果 |
研究実績の概要 |
カーボンナノチューブの表面に吸着し、カーボンナノチューブの水への分散を促すとともに、その静電的な性質から比較的濃厚な分散液には液晶性が発現することを見出した。この液晶性を利用し、ナノチューブが配列した薄膜、配向の制御などを可能にする製膜技術の開発を行なっている。液晶性を発現するナノチューブの分散液はいくつか知られているが、使用する試薬がアルカリ金属や強酸などであり、簡便で汎用な方法とはいえなかった。一方、当該分散剤を用いる手法は、中性条件で液晶性を発現し、溶液の調整も20kHz程度の超音波照射により調整可能であるため、非常に扱いが容易である。これまで、分散液を基材にはさみ、シェアをかけることでカーボンナノチューブの配向膜を作製してきた。しかし、この手法はアナログのため、剪断力や速さを制御することが難しかった。そこで、本年度は、ディッピング装置を用いて、引き上げ速度等を制御した配向膜作製技術の確立に取り組んだ。また、用いる分散剤の可能性を広げるために、これまでアゾベンゼンやスチルベンを主骨格としてきたところを、ナノチューブ表面と相互作用しやすい他の多環平面状官能基を用いて新規合成したものを使用した。この化合物は予想通り、カーボンナノチューブを高濃度で分散することができ、その高濃度分散液には液晶性が発現することを確認することができた。新規に合成した分散剤を用いて調製した分散液を用いて、基板上にナノチューブをディッピング法により製膜したところ、基板の処理によって、ナノチューブの配向が異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、液滴の蒸発によってみられていたコーヒーリング効果を、ディッピングの方法で再現することで、面内に配向制御されたナノチューブ膜を得られることを見出した。基板の疎水・親水により、気・液・固界面の移動・接触角変化が液的内部に「流れ」を発生させる・発生しない、ということが論じられてきたが、ディッピングにおける濡れの界面でも同様な現象がみられ、溶質(この場合はナノチューブ)の配列に寄与することを見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
論文にまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加等の出張が制限されたため、出張費の執行がなかった。来年度は誌上発表も含め成果発表を積極的に行う予定であるので、社会状況が許せば積極的に執行していく。また、昨年度得られた知見を展開するための整備(ディッピング用の治具周りなど)への使用も計画している。
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