研究課題/領域番号 |
19K05050
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研究機関 | 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室) |
研究代表者 |
城崎 智洋 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主任 (70554054)
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研究分担者 |
高藤 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50332086)
龍 直哉 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主任 (90743641)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒドロキシアパタイト / セルロース / マイクロ球状粒子 / コア-シェル構造 / 擬似体液 / TEMPO酸化 / 骨代替材料 / 歯科材料 |
研究実績の概要 |
骨再生に有効な充填材として、均一な連続孔を有する高結晶性ヒドロキシアパタイトを開発することを研究目的としている。ヒドロキシアパタイトの空孔のテンプレートとして、TEMPO触媒酸化によってカルボキシ基を導入したセルロースマイクロ球状粒子を用いている。 本年度は、目標1として、「最適なカルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子の調製」を挙げており、平均粒径がそれぞれ、10μm、50μm、200μmのセルロースマイクロ球状粒子をTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)触媒酸化することによって、カルボキシ基の導入量が異なる13種のセルロースマイクロ球状粒子をラインナップ化することができ、目標としていたカルボキシ基量の異なる一連のセルロース粒子の調製を達成することができた。 目標2としては、「コア-シェル型セルロースアパタイト複合球状粒子の調製」を挙げており、擬似体液中で生成するアモルファスなヒドロキシアパタイトの粒子であるアパタイト核を、カルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子表面に複合化させることを試みた。擬似体液中にカルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子を添加してもアパタイト核は独立して生成し、また変形してしまうものが多数発生してしまうため、効率良く複合化することはできなかった。そのため、擬似体液法によって予めアパタイト核を調製し、単離したものをカルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子の分散液に添加することによって、粒径約50 μmのセルロース球状粒子表面に粒径約100 nmのアモルファスなヒドロキシアパタイト粒子を複合化させたコア-シェル型セルロースアパタイト複合球状粒子を調製することができた。複合化の際のアパタイト粒子の添加量を調整することによって、複合化されるアパタイト核の量を制御することができ、目標を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目標として、「最適なカルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子の調製」を挙げており、粒子径が10 μm、50 μm、200 μmのセルロースマイクロ球状粒子をそれぞれ用いてTEMPO触媒酸化反応を行うことによって、粒径またはカルボキシ基の量が異なる13種類のカルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子を得ることができており、目標を達成することができた。 また、その他の目標として、「コア-シェル型セルロース/アパタイト複合球状粒子の調製」を挙げているが、人の血漿と同じイオン比で、且つ過飽和状態の濃度である擬似体液を用いることによって、粒子径が約100 nmのアモルファス状のヒドロキシアパタイト粒子であるアパタイト核を調製することができた。擬似体液にカルボキシル化セルロースマイクロ球状粒子を加えてからアパタイト核を生成させると、セルロース粒子と複合化しないアパタイト核が多量に生成してしまったり、アパタイト粒子が鱗片状に変形してしまったりしたため、単独でアパタイト核を調製した後、回収したものを用いてカルボキシル化セルロース球状粒子と複合化させる方法を採用した。アパタイト核は変形せずにカルボキシル化セルロース球状粒子と複合化し、目標とするコア- シェル型セルロースアパタイト複合球状粒子を調製することができた。シェルであるアパタイト核の、コアであるセルロースマイクロ球状粒子への複合化量は、セルロース球状粒子のカルボキシ基量が一定である場合、複合化時に添加するアパタイト核の添加量によって制御することが可能であった。複合化時にアパタイト核が変形する場合があったが、セルロース球状粒子のカルボキシ基量や、複合化時のpHを最適化することによって、アモルファス状を維持したアパタイト核をセルロース球状粒子に複合化させることに成功しており、当初想定していなかった特性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の目標として、これまでに調製したセルロース/アパタイト複合球状粒子を起点としてヒドロキシアパタイトを成長させることによって、結晶性を制御したヒドロキシアパタイトを調製することを挙げている。擬似体液中にセルロース/アパタイト複合球状粒子を浸漬することによって、アパタイト核からヒドロキシアパタイトを結晶成長させることを試みる。擬似体液法によってヒドロキシアパタイトが十分に成長しない場合、水酸化カルシウムのスラリー中にリン酸を滴下することによってヒドロキシアパタイトを調製する沈殿法において、セルロース球状粒子を共存させることによって、バルクなアパタイトとセルロース球状粒子の複合体を調製する。バルクなアパタイトとセルロース球状粒子の複合体が得られたら、焼成し、空孔を持ったヒドロキシアパタイト材料を調製する。得られたアパタイト材料の空孔率や強度を調査し、セルロース粒子のカルボキシ基量や焼成温度等を検討することによって、骨代替材料や歯科材料に応用可能なヒドロキシアパタイトの調製を目指す。
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