本研究では,高温構造材料として研究開発経験のあるNi-Ti-Al系ホイスラー合金を対象に第一原理計算の解析と不定比組成の材料創製による高熱起電力の探索,およびナノ・ミクロ複合構造の導入による熱伝導率の大幅な軽減とモンテカルロ有限要素法によるミクロ解析を行う計画である。電子構造・状態密度から,ナノ・ミクロ複合へとマルティスケールにおいて相乗効果を発現させる材料創製と機構解明によって実用可能な高性能Ni-Ti-Al系ホイスラー合金熱電材料を実現することを目標としている. これまで,第一原理計算による電子構造を解析し,フェルミ準位における状態密度が小さく,フェルミ準位近傍の状態密度に急峻な変化がある組成のNi-Ti-Al系ホイスラー合金およびNi原子を他元素で置換したNi-M-Ti-Al系ホイスラー合金を探索し,その熱電特性の解析を行い,高性能化への検討を行った.その結果,(1)第一原理計算により,Ni量を減らすことによりフェルミ準位が価電子帯側,Ni量を増やすことにより伝導帯側に移動することが明らかになった.(2)NiMnTiAlのDOSよりフェルミ準位近傍に擬ギャップが形成しており,フェルミ準位を最適化することで高いゼーベック係数が期待されることが明らかになった.(3) Ni2TiAlとNiMnTiAlのゼーベック係数とZTが計算できた.続いて,モンテカルロ有限要素法によるミクロ解析について,有限要素解析結果と複合則との比較では,直列複合則とはよく一致した.TiO2-x/Niランダム分散モデルでは,Niの体積率50%付近にパーコレーション閾値が存在し,電気抵抗率が大きく低下した.またTiO2-x/Niランダム分散モデルでは,無次元性能指数はNiの体積率を増加させるほど大きくなった.これまでの研究結果をまとめ,学会で10件の研究発表,および2件の査読付き学術論文があった.
|