研究課題/領域番号 |
19K05054
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
寺田 芳弘 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (40250485)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 高温強度 / ラメラ組織 / 高分解能電子顕微鏡 / 異相界面 / 転位 |
研究実績の概要 |
Mg-Ca 二元系 α-Mg/C14-Mg2Ca ナノラメラ合金について,室温から 473 K の温度領域の広範なひずみ速度において引張試験を行い,あわせて,473 K/40 MPa においてクリープ試験を行った。2020年度に得られた成果を,項目別に以下に総括する。(1)ナノラメラ合金について引張試験を行うと,423 K 以下の低温度領域では,降伏現象が生じる前に試験片は破断し,塑性変形は生じない。これに対し,473 K 以上の高温度領域においては塑性変形が生じ,ひずみ速度の低下に伴い塑性変形能は高くなる。(2)ナノラメラ合金について,473 K,応力 40 MPa にてクリープ試験を行うと,クリープ曲線は,通常型の遷移域の後に最小クリープ速度を示し,加速域を経て破断に至る。ラメラ間隔が小さいほど最小クリープ速度が低下することから,α/C14 界面は高温クリープ強度の向上に有効に作用し,クリープ強化因子とみなすことができる。(3)ナノラメラ合金のクリープ中において,転位の活動は主に α-Mg ラメラ内部にて生じ,転位の大半は同一のバーガーズベクトルを有する a 転位となる。また,α/C14 界面上において,転位はランダムに分布している。α/C14 界面は α-Mg ラメラ内部における a 転位のすべり運動の障害としてはたらき,α/C14 界面上において転位の消滅および最配列は生じない。(4)ナノラメラ合金の高強度化を指向して,α-Cr/Cr2Nb 合金および α-Nb/Cr2Nb 合金の試作を行い,ナノラメラ組織の組織安定性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行にあたり,クリープ試験装置が回復したため,当初予定していた調査研究項目の研究課題を遂行した。全体として研究はおおむね順調に進捗しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から,① α-Mg/C14-Mg2Ca ナノラメラ合金が 573 K 以下の温度領域において組織安定となること,② 473 K 以上の高温において塑性変形能を有すること,および,③ ラメラ間隔の減少により高温クリープ強度が増加すること,が明らかとなった。これらの結果を受けて,当初の計画どおりに,組織安定な 473-523 K において高温クリープ試験を実施し,クリープの応力指数,および,クリープの活性化エネルギーなどの基礎的なクリープパラメータを調査し,本系合金におけるクリープ変形メカニズムを明らかにする。
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