研究課題/領域番号 |
19K05056
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
宮嶋 陽司 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (80506254)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルミニウム / 合金 / 遷移金属 / Al / Fe / 力学特性 / 電気抵抗率 / 転位密度 |
研究実績の概要 |
本研究では,遷移金属元素をアルミニウム合金にごく少量添加することで,高強度高導電率合金の作製を目指している.従来の金属材料は母相の中に少量の合金元素を添加することで高強度化を図ってきたが,本合金はそれに加えて巨大ひずみ加工を施すことで,大量の格子欠陥を材料中に導入して高強度化をはかる.本研究では,低濃度の遷移金属を用いてアルミニウム合金を作製し,その力学特性と電気特性が巨大ひずみ加工によってどう変化するかを明らかにすることを目的としている. 本研究では,モデル材としてAl-Fe合金を用いた.この合金に対してARB法と呼ばれる冷間圧延と同等の巨大ひずみ加工を最大で8サイクル(c)施した.力学特性,電気特性および材料組織の相当ひずみの増加に伴う変化を調査した.その結果,従来報告されている純Alの巨大ひずみ加工に伴う材料組織の変化と近い組織発達過程を示すことが判明した.具体的には力学特性の変化は純Alと同様に,相当ひずみの増加に従って強度が徐々に増加していくことが分かった.また,電気特性は純Al様に,組織変化に対応して単純に増加していくことが判明した.力学特性および電気特性の変化は,材料組織因子である転位密度や粒径によって説明できることが明らかになった.ただし,具体的な電気抵抗率の値は純Alの場合と異なっており,それは,少量だけ添加している合金元素(遷移金属元素であるFe)の影響だと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は典型的なハイエントロピー合金として,モデル材としてAl-Fe合金を用いた.この合金に対してARB法と呼ばれる冷間圧延と同等の巨大ひずみ加工を最大で8サイクル(c)まで施した.各相当ひずみにおける試料の力学特性,電気特性を測定し,材料組織観察をSEMおよびEBSDを用いて行った.その結果,従来報告されている純AlのARBに伴う力学特性の変化に近い強度の変化を示すにも関わらず,電気特性は純Alと異なって単調増加しないことが判明した.材料組織観察結果では,純Alとは近い組織発達過程を示すことが判明した.今回測定された電気特性は,純AlのARB材と似た性質である事が判明したが,その絶対値は異なっており,合金元素の選択が重要であることを示唆している.
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今後の研究の推進方策 |
すでにAl-Fe合金に対してARB法を施して各種測定・観察を行っているが,今後は計画通りに,ARBを施された試料に対して種々の条件で熱処理を行い,力学特性および電気特性がどの様に変化するかを明らかにしていく.また,Al-Ni合金やAl-Mn合金といった別の遷移元素を添加した合金系でどの様な特性が発現するかを明らかにしていく.
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