亜酸化銅(Cu2O)は可視光が利用できる光触媒であるが、還元力に優れる一方で酸化力の弱いことから単味で使用すると徐々に自己酸化を起こして失活する。本研究ではCu2Oにルチル型の酸化チタン(TiO2)光触媒を複合化することで強い還元力を持ち、かつ継続的に利用のできる光触媒の作製に取り組んだ。2020年度までにルチル型酸化チタン(TiO2)に金と亜酸化銅(Cu2O)を複合化した光触媒(Cu2O-Au-TiO2)について、水中の有害なCr(VI)の除去に高い活性をもつことを示した。しかし光の当たらない場合に起こる暗反応や光照射下でのCuおよびCrの価数変化に明確でない部分があったため、2021年度はX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの測定により、暗所及び明所で起こるCrとCuの価数変化を調査した。 暗所においてCu2Oのナノ粒子またはCu2Oを含む複合体は水中のCr(VI)濃度を減少させる。このときCu2O上のCrについてCr(VI)に由来する5992 eV付近のプレエッジピークがK2CrO4やCuCrO4といった対照試料と比較して大きく減少していることから、吸着したCr(VI)はCu2Oの一部を酸化する一方で、自身は一部がCr(III)に還元されていると考えられた。また光照射を行うことによりCu2O-Au-TiO2複合体ではCrのプレエッジピークがさらに減少する一方、Cu2Oナノ粒子ではほとんど変化がなかったことから、複合体では暗反応に続く光触媒反応によりCr(VI)の還元がさらに進行すること、Cu2O単味では光触媒として働いていないことが示された。また溶液中のCr(VI)の濃度が高く、暗反応によりCu2Oが完全にCuOに変化した場合にも複合体は高い活性を保持した。
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