研究実績の概要 |
本研究では, 弾性的に変形する超軽量材料を作製し, これを熱スイッチング技術へと応用することを目的とする. 本年度は, シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)を主体に高分子材料とコンポジット化し, 弾性的に変形可能な超軽量材料(密度 10mg / cm3以下)を作製する. SWCNTの分散制御(SP化学修飾, 超音波解砕, 分散剤)と高分子材料とのコンポジット化による組織設計を行うことで, 材料の機械的特性の向上を行う.圧縮応力を開放すると完全に元の状態に復元する形状記憶の実現を目指した. 弾性的に変形する超軽量材料を実現するために, SWCNTとカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)の分散液を作製し, 各種濃度に調整して凍結乾燥させることにより密度5 , 2.5, 1.3 mg/cm3の異なるCNT/CMCスポンジを作製した. このとき, 組成やCMCの分子量を調整した. また, 凍結時に氷晶の一軸配向制御を行うことによって, 材料に配向性をもたせた. 配向方向に垂直に圧縮試験したところ, 弾性的に回復する挙動を確認することができた. 一方で, 配向方向に平行に圧縮試験を行うと, 降伏点が現れ, 十分な回復挙動を示さなかった. 80%ひずみまで圧縮した際, 密度が小さくなるにつれて回復率が高くなった. また, CNTの組成も影響し, CNT組成が10%のとき, 回復率が最大となった. CNT比率が高くなるほど, 弾性率が高まるため回復率が高まりそうだが, 実際には圧縮時にCNT間のファンデルワールス相互作用が強く働くためCNT組成が10%程度で最適になったと考えられる. また, 分子量との関係について評価したところ, 分子量が小さくなるほど, 回復率が向上する傾向がみられ, 最大で84%以上の回復がこれは, 分子量がちいさくなるほど, 高分子自身の水素結合によって蓄積された内部応力が小さくなるためであると推察される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 圧縮に対して弾性的に回復する超軽量材料を作製することができた. これは本研究の目標となる熱スイッチング技術を確立するための基盤となる技術である. また, 伝熱挙動は, 固体伝熱, 輻射伝熱, 気体伝熱によって主に分類されるが, 真空環境下での伝熱挙動を評価できる装置を作製し, 実際に評価できることを確認した. このため, 来年度以降の熱スイッチング評価を行うための基盤を確立することができたため, 本年度はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は, 材料の圧縮および非圧縮時の伝熱の寄与を固体伝熱, 輻射伝熱, 気体伝熱に分離し, 各成分の寄与を明らかにする。断熱と伝熱を可逆的にスイッチングするために伝熱挙動を向上するための取り組みを行う. 我々が試作した材料の断熱性能はは0.1W/mK程度を示すが, 伝熱挙動は目標に対して十分ではない. 本年度は圧縮時の伝熱挙動を高めるために, 材料間の接触熱抵抗を低減するための工夫を行う.
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