研究実績の概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)から成る超軽量材料を熱スイッチング材料へと適用するための課題として, 圧縮回復特性の向上が挙げられた.これまでにCNT/CMC超軽量材料にトリメチルメトキシシラン(TMS)を用いた疎水化処理によって圧縮回復特性の改善が見られることを明らかにした。本年度は, 表面修飾するTMS量を変化させて, 圧縮回復特性への寄与を評価した. TMS量を変化させると, 接触角が最大となるところが現れるが, 接触角が最大となるとき, 回復特性も最大となった. 一方で, 水の吸着量を評価すると, 湿度60%程度では, 吸水量に大きな変化はなかった. これは湿度60%程度までは, 材料内のミクロな孔に水が吸着するためである. つまり, 疎水化処理によって, ミクロな孔に吸着する水には大きな影響を及ぼさないが, マクロな水に対しては疎水化の効果を発揮する. 一方で, DSCにより測定すると疎水化処理によって結合水は減少し, 自由水が増加していた. このことから, CMC表面の-OH官能基は反応が進んでいると考えられる. これらを総合して勘案すると, CNT/CMC超軽量材料の弾性回復特性を向上させるためには, CMCのOH基等を介した水素結合による分子間力を低減させること, 巨視的には水をはじき, CMCの溶出などが抑えられることが重要であることが分かった. 本研究により安定した圧縮回復特性を獲得できたため, 熱スイッチング材料としての適用可能性が高まった. これまでの検討より, 熱伝導率で換算すると圧縮による断熱-伝熱の熱伝導率は0.06W/mK―0.14 W/mKとなった. 伝熱挙動の改善が求められるが, 圧縮-回復によって厚みが大幅に変化することを考慮すると熱流束としては大きな変化が得られることを明らかにした.
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