研究課題/領域番号 |
19K05060
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
趙 研 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00633661)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 双晶変形 / マルテンサイト / 温度依存性 / 臨界分解せん断応力 / 単結晶 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、室温にて{332}<113>双晶変形によって塑性変形することが明らかとなっているTi-12Mo(mass%)合金の多結晶および単結晶試料を作製し、変形温度を室温以下とした場合の変形挙動について、引張特性および臨界分解せん断応力(CRSS)にそれぞれ着目して調査した。 すべりが塑性変形を担う金属材料の場合、変形温度の低下に伴って0.2%耐力は増加するものの伸びは低下する。これに対して、同合金の多結晶試料は、0.2%耐力と伸びが変形温度の低下に伴って共に増加するという特異な挙動を示した。これは、変形温度の低下に伴って、形成される{332}<113>変形双晶の量が増加したためである。変形温度の低下は、α"マルテンサイト相への相変態のための駆動力増加することにつながることから、α"相が同双晶変形の前駆体となることが示唆される。 そこで、同合金の単結晶試料をα"マルテンサイト相の形成に優位な方位にて室温~-180℃で変形し、各温度での変形機構を調査した。その結果、全ての温度でα"相ではなく、{332}<113>変形双晶が観察されたことから、α"相が同双晶変形の前駆体となることが改めて示唆された。この時の{332}<113>双晶変形のCRSSは、変形温度の低下に伴って増加した。これは、低温において、ナノサイズω相の形成とα"マルテンサイトの形成とが競合したためだと考えられる。また、同単結晶試料を{332}<113>双晶に優位な方位で変形した場合も全ての温度で同双晶変形が発現した。しかし、この時のCRSSは、変形温度に依存せず一定であった。これは、前駆体を必要とせず原子のせん断とシャッフルによって双晶が形成する場合のCRSSの変形温度依存性と一致する。このことから、同双晶変形の発現メカニズムは複数存在し、変形する方位に依存する可能性があることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、{332}<113>双晶変形が発現する合金の引張強度や延性、CRSSの温度依存性について、多結晶および単結晶試料を用いて調査することを計画し、計画通り順調に進捗している。本研究の中でα"マルテンサイト相の形成に優位な方位で変形した場合に{332}<113>双晶変形のCRSSが変形温度の低下に伴って増加するとの結果を得たが、これは当初の想定とは異なる。これに対して、追加のビッカース硬さ試験等を行うことでその原因を考察したことは、当初の計画より進展している点である。 総合的に評価した結果、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、透過型電子顕微鏡観察や中性子回折を用いて{332}<113>双晶変形の発現メカニズムをより詳細に調査することを計画している。ここでは、令和元年度の研究結果から示唆された、「同双晶変形の発現メカニズムは複数存在し、変形する方位に依存する可能性がある」ことに注目し、単結晶試料を様々な変形機構(すべり、双晶、αマルテンサイト相)に優位な方位で変形し、上記手法を用いて微細組織の解析を行う。また、その場観察手法を併用することで、相変態などを直接捉えることを目指す。
|