本年度では、純チタン粉末およびチタン合金 (Ti-6Al-4V) 粉末に異なる添加量の酸化物を導入し、積層造形した試料の微視組織を更なる解析し、積層造形したチタンやチタン合金の組織、機械的性質、塑性変形挙動などに及ぼす微量酸化物添加の影響への理解を深めた。積層造形した純チタンは造形方向に伸長した柱状晶を呈しているが、酸化物を添加した造形体は微細な針状組織を有し、添加量が増加するにつれて組織がより微細化される傾向が見られた。母相解析を行ったところ、針状組織はバーガースの方位関係{110}β//{0001}αに従って相変態したことが分かった。 純チタンでは造形方向に{0001}面が強く配向しているのに対し、酸化物を添加することで結晶配向性が弱くなり、結晶異方性が緩和された。その結果、純チタン造形体が造形方向によって引張応力が大きく異なるが、酸化物を導入した造形体は造形方向に寄らずほぼ同等な応力レベルを示した。また、チタン合金に微量の酸化物を添加した造形体の格子定数は酸化物添加量の増加に伴って増加するが、純チタンに添加した場合よりも格子定数増加の効果はやや小さいことを示した。 本研究では、純チタン粉末と微量の酸化物粉末からなる混合物を用いて3D造形のワンプロセスのみで、汎用のTi-6Al-4V合金を凌駕する高強度と高延性を同時に実現できることを見出した。今後、高強度かつ優れた生体適合性を有する次世代カスタムメイド人工股関節用基盤材料としての応用が期待される。また、提案した手法をチタン合金に適用することによりチタン合金の更なる高強度化の可能性が確認された。
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