研究実績の概要 |
令和5年度は、主にBi2O3-TiO2 系及びBi2O3-ZrO2系の複合酸化物の調製を試みた。特に、Bi2O3-TiO2 系については第一原理計算を実施した。Bi2O3-TiO2 系複合酸化物は、化学組成としてBi2Ti2O7, Bi2Ti4O11, Bi4Ti3O12, Bi8TiO14, Bi12TiO20 が知られている。最近の研究では、光生成された電子―ホールの電荷分離が効率的であるという観点から、Bi4Ti3O12が光触媒材料としての応用が期待されている。また、Bi4Zr3O12 はエネルギーバンドギャップが 約 2.76 eVであるため、可視光応答型光触媒としての有用性を検討した。 まず、錯体重合法により、Bi4Ti3O12の合成を試みたが、混合相として Bi24Ti2O40 や Bi2Ti4O11 等含まれており、高純度な試料を合成できなかった。次に、Bi4Zr3O12 の合成を試みたが、Bi1.85Zr0.15O3.075 などを不純物相として含んでおり、高純度な試料を合成できなかった。 次に、Bi4Ti3O12について第一原理計算を実施し、固体電子構造を明らかにした。まず、Bi4Ti3O12と原子座標について、CASTEPを用いて構造最適化を行った。交換相関相互作用は、一般化密度勾配近似法(GGA)の枠内とした。第一原理エネルギーバンド計算は、バンド計算法の中で最も高精度なFLAPW+lo法により行った。その結果、Bi4Ti3O12は間接遷移型材料であり、Bi4Ti3O12の最小ギャップは 2.50 eV と見積もられ、可視光応答型光触媒として応用展開できることが明らかになった。
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