研究実績の概要 |
原料の(W, Ti, Ta)C粉末は,通電加圧焼結装置を用いて,焼結温度1600℃~1700℃で合成した.いずれの焼結温度でも相対密度99%の緻密な焼結体が得られた.構成相はTaCと同様の立方晶の固溶体相単相となった.焼結時昇温中の収縮挙動の解析より,収縮は約1400℃でピークとなっており,バインダーレスのWCなど他の2元炭化物と比べて低い温度であった.固溶体中のTa量が機械的性質に及ぼす効果を明らかにするため,TaCを加えることで焼結体中のTa量を制御した.(W0.3Ti0.6Ta0.1)Cに対しTaCを最大50 mol%加えた.TaCを加えても収縮係数のピークは約1400℃程度であり,大きな変化は見られなかったため,焼結性には,顕著な影響をおよぼさなかった。構成相は,TaC量が増加しても,(W, Ti, Ta)C固溶体相単相となった.Ta量増加は,相安定性に影響しなかった.X線回折における固溶体相のピーク位置は,TaC量の増加によりTiC側からTaC側にシフトした.微細組織は,TaC量が増加しても顕著な違いはなく,粒状の均一な組織となった.平均結晶粒径は,TaC量が増加すると,わずかに小さくなった.ヤング率は,TaC量増加により高くなった.固溶体相中のTa量の増加はヤング率増加に効果的である.硬さは,TaC量が増えても大きな違いは見られなかった.破壊靭性値は,TaC無添加と比べると低い値となった.
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