研究課題/領域番号 |
19K05076
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山根 敏 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10191363)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 深層学習 / パルスマグ溶接 / 溶融池画像 / パルス電流 / 裏ビード形状 / 畳込みニューラルネットワーク / オンライン推定 / 溶込み深さ推定 |
研究実績の概要 |
深層学習を適用し、溶接時の溶込み深さの推定を行うために開先を持つ片面溶接を対象とし、溶接実験時の溶込み状態を調べた。通常であれば、溶接断面を加工して、溶込みを調べる必要があるが、簡単に調べるために、ここでは、セラミックス製の裏当て材を用いた。実験後に、この裏当て材を除去し、裏ビードの形状を調べた。溶接中に溶接溶融池をCMOSカメラを用いて撮影し、その溶融池形状と裏ビードの関係を明確にした。これを行うために、明瞭な溶接溶融池画像が重要である。そこで、パルス溶接電流を用いるMAG溶接を適用し、溶接電流がベース期間に同期させて溶融池を撮影した。ベース電流期間のために、溶接アーク光の影響を軽減した。溶接画像を深層学習の入力とし、裏ビード形状から溶け込み状態を識別した。 識別のために、畳込みニューラルネットワークを採用し、過学習を防ぐために、Resnet-50の構造を用いた。学習において、教師データを構築するのに大変な労力が必要となる。これを簡略化するために、実溶接で行われている判断基準を適用した。具体的には溶接作業者は裏ビード外観を判断して、溶込み不足、良好、溶込み過多を定性的に判断している。ここでは、この状況を鑑みて、3段階の識別とした。溶接条件として、溶接電流、ワイヤ送給速度、溶接電圧および溶接速度があり、一般に溶接アークの安定性から、調整可能なものとして、本研究でも溶接速度を調整する。そこで、学習に必要なデータとして、適正な溶接速度付近で溶接速度を調整した。その実験時の裏ビード結果と溶融池形状の関係を考察した。その結果、裏当て材が溶融すると溶融池画像の前方部が赤熱する。この状態では溶込み過多となった。このように、溶融池溶込み形状と溶融池画像のとの関係を求め、画像データから教師データを3種類に識別し、学習を行った。未学習データに適用し、良好な識別結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非常事態宣言等により、学生による研究支援を受けることが困難になり、予定より研究を遂行することができない期間が多かった。このため、研究の遂行が遅れた。そこで、溶接システムを変更し、少人数でも実験が行えるように、自動化システムの構成を変更した。この変更に予想以上に時間がかかったため、予定より溶接実験などが遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
パソコンにより溶接電源を制御できるように大幅に改造したものを用いていた。しかし、この方式では、パソコンの処理負担が大きく、リアルタイムによる溶込み推定が行いにくいことおよび研究成果を実際の溶接現場への転用を行いにくい。そこで、市販の溶接電源を改造せずに、溶接システム制御できるように、システム構成を変更し、溶融池溶込みのリアルタイム推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議や国内会議が中止になったために、旅費の支出がなくなり、差額が生じている。この支出分などは、論文投稿費および深層学習をオンライン適用するためのシステムの改造費用に使用する。
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