研究実績の概要 |
6000系アルミニウム合金板の極密度をX線回折装置によって測定した.極密度は{111}, {200}, {220}, {311}の4面を測定した.なお,板厚方向に平均的な極密度を測定するために,試験片を積層して圧延方向と板厚方向からなる面に対してX線回折を適用した.それらの極密度より結晶方位分布関数を求めた.さらに,それより離散的な結晶方位を創製した.離散的な結晶方位を有限要素に割り当て,多結晶モデルを作った.転位密度に基づく結晶塑性モデルを用い,周期境界条件を付与して数値材料試験を実施した.解析における巨視的応力状態を制御するために均質化法を適用した.数値材料試験では,圧延方向から15°間隔で圧延直角方向までの方向に単軸引張を実施した.また,二軸引張試験では,圧延方向と圧延直角方向の荷重比を7通り設定して引張試験を実施した. 昨年度実施した実験結果および数値材料試験の結果について,単軸引張のR値および流動応力,等二軸引張の塑性ひずみ速度比と流動応力を降伏条件に基づく巨視的塑性モデルで近似することで,巨視的な材料構成則を同定した.そして,この2種類の構成則を用いて円筒深絞り解析を実施した.その結果,結晶塑性モデルによる数値材料試験の結果をもとにした材料構成式の予測精度は,実験結果をもとにした解析結果と同程度であることが明らかとなった.つまり,数値材料試験の結果の有用性が示された.しかしながら,実験結果との間には多少の差が確認された.
|