レーザ金属積層造形法(SLM法)は、任意の厚さに敷き均した金属粉末にレーザを照射して、金属粉末を溶融・凝固して2次元形状を作り、これを繰り返し積み上げて3D 形状を造形する手法である。しかし、従来のSLM法では、粉末を溶融させる以上の過剰なエネルギーを投入して、粉末だけでなく下層を一緒に溶融させて、一層を形成していた。これでは、エネルギー効率が悪いだけでなく、大きな熱歪みの発生、スパッタの発生、造形物の金属組織が不均一などの起因となっていた。そこで本研究では、工業的に広く応用されているTI64に変調パルスレーザを用いて積層造形を行い、レーザの入熱量が造形物の機械特性に与える影響を明らかにした。 まず真空チャンバ内にTi64粉末をセットし、その状態で真空チャンバを1.0×10-3Paまで減圧する。その後、積層ピッチ分下降させ、Ti64粉末をリコータで造形ステージに供給し、100μm厚さに粉末を敷き均した。レーザは2軸制御型ガルバノミラーとFθレンズを用いて導光し、真空チャンバ内のTi64粉末に掃引照射した。レーザの掃引方法は、リニアラスタースキャン方式を採用して、20層の積層し、10mm×10mm×2mmの直方体の試験片を作製した。その結果、入熱量が多いCWレーザの場合には、α相が支配的なTi64で、硬度は表層が310HV、基板近傍が280HVとなり、不均一な組織を呈した。一方、変調パルスでは、パルス周波数が大きくなるに従って硬度が高くなり、α+β組織を呈した。さらに、パルス周波数100Hzで造形したサンプルは、硬度が表層、基板近傍ともに平均303HV±5HVが得られ、面内の組織が均質であることを示唆する結果を得た。従って、レーザの入熱制御によって組織制御ならびに組織の均質化が可能であることが示された。
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